麻酔なしで心電図検査もこなした
タンタンはどんなパンダだったのでしょう。外見は、小柄で足が短め。とてもかわいらしいです。死の3日前の体重は98kg。元気な頃は80kg台だったこともあります。98kgは、栄養をとれずに痩せた一方で、心臓疾患によって体に余分な水分が溜まった結果です。
特技はハズバンダリートレーニング。早い時期から飼育員と一緒に取り組んできました。これが心臓疾患の早期発見と検査、適切な治療につながりました。心臓疾患の判明後は、聴診、視診、エコー検査、血圧測定、心電図検査、レントゲン検査が必要になりました。心電図検査では、タンタンを横たわらせて、体に数本の電極を取りつける必要があります。パンダは猛獣ですが、タンタンはトレーニングのおかげで麻酔や鎮静処置をせずに、これらの検査ができたのです。麻酔は危険を伴います。
「日々検査して、ずっと適切な治療をすることができました。タンタンは苦しむことなく過ごしてくれていたと思います」(谷口さん)
タンタンの性格は、飼育員の梅元良次さんによれば、マイペースでちょっと神経質。給餌では苦労させられたそうです。そんなタンタンが長い間、心臓疾患のための薬を服用してくれました。「今となっては良い思い出です」と梅元さんは振り返ります。
治療を始めてからのタンタンは、飼育員の吉田憲一さんが近づくと吠えることが増えました。それでも室内の柵越しに近づくと、タンタンは寝転がってくれました。「嬉しかった」と吉田さんは声を詰まらせながら、タンタンの死の翌日に語りました。
2024.04.06(土)
文・写真=中川美帆