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 東京・上野動物園で生まれたジャイアントパンダのシャンシャン(香香)が中国へ行ってから2月21日で1年が経ちました。実はシャンシャンは、渡航前に狂犬病ワクチンを接種しています。この話は、同園が2023年10月29日に開催した学生向けセミナー「飼育係だけ!? 動物園でパンダと働くシゴト案内」で獣医師が明かしました。

 パンダに関わるさまざまな仕事を伝え、視野を広げてもらおうと企画されたこのセミナーの様子を中心に、上野動物園のパンダにまつわる仕事を4回にわたり紹介します。

» #2 飼育係
» #3 獣医師
» #4 そのほか


パンダが食べ残した竹は東京湾の埋め立て資材に

 パンダにふれないけれど、パンダと関わりが深い仕事の1つが調整係。飼育係と同じ「公益財団法人東京動物園協会 恩賜上野動物園 飼育展示課」に所属します。(上野動物園は都立動物園で、東京動物園協会は東京都の指定管理者)。調整係の仕事は、動物の搬出入の交渉や血統管理、国内外の動物園との連携など多岐に渡り、エサの調達も担います。

 パンダの主食は竹。上野動物園でパンダに与える竹には「害虫駆除用の農薬がかかっていない」「大きな道路から離れていて、排気ガスがかかっていない」といった条件があります。しかも竹は成長が早いので、竹を採る人は現地の状況に精通している必要があります。

 そこで専門の会社が伊豆半島から1回につき約500kgを週4回採ってきています。この作業料や輸送費がかかるうえ、パンダは竹を選り好みします。与えられた竹の3分の1ほどしか食べないので、多くの竹を用意する必要があります。このためパンダは上野動物園でエサ代が1番高い動物なのです。

「あげた竹を全部食べないので、1日に1頭でどれくらいお金がかかるか(計算するのは)難しいのですが、2番目にエサ代のかかるゾウが1日およそ1万円で、その2倍以上と考えてもらっていいと思います」

 調整係の担当者はこう指摘します。

 なるべく無駄のないように、調整係は竹を採る会社の人に「今日の竹はよく食べた」「少ししか食べなかった」とパンダの食べ具合を細かく伝え、竹を選ぶ際の参考にしてもらっています。

2024.03.17(日)
文・撮影=中川美帆