その時々で感じる想いを大切にしてほしい
――聡実くんの後輩・和田も、自分の感情を素直に爆発させる中学2年生という設定で、聡実くんや狂児の表情をより効果的に彩りました。
和田の感情が聡実くんにインフルエンスして、最後に聡実くんが感情を爆発させるのは、ある意味とても「青春」で美しかったです。
――「齋藤潤くんの青春ドキュメンタリー」ともおっしゃいました。
山下監督はじめ、本作の現場には、『齋藤潤が生きる岡聡実をどれだけ魅力的に届けるか』という想いが集結していました。潤くんはプレッシャーも大きかったと思いますし、悩んだ事もあったと思いますが、10年後彼がこの映画を振り返り観たときに、「もっとこうすればよかった」という後悔ではなく、みんなで気持ちをひとつにして、育み、映画を作った。そんな体感を、現場を思い出していただければ、この作品を映画化した理由がひとつ結実するのだと思います。
――本作は、聡実くんのボーイソプラノ、義務教育の終了、古いヤクザの解体、変わる町並みなど、「消えてゆく」ものにも焦点をあてています。綾野さんはご趣味で写真を撮られますが、失われていくものへの思いを残すために、人は写真を撮ったり、記録に残したりするのでしょうか。
僕は写真を撮ることで、その景色を永遠に残そうと思っているわけではありません。その写真を撮ったときの自分の心情や祈りを忘れない事を大切にしています。
観れば思い出せる、ランドマークのような。
本作も、観る方によっていろいろな想いがわくと思いますが、また何年後かに観たら、最初に観たときとは違う感情があふれるかもしれない。そんな想いも、ぜひ大切にして観てほしいです。
綾野剛(あやの・ごう)
1982年1月26日生まれ。岐阜県出身。2003年、ドラマ『仮面ライダー555ファイズ』で俳優デビュー。12年公開の映画『横道世之介』で、『第37回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。そのほか多数の作品に出演。音楽や写真などといったカルチャーにも造詣が深い。
『カラオケ行こ!』
合唱部部長の岡聡実はヤクザの成田狂児に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける“恐怖”を回避するため、何が何でも上達しなければならないというのだ。狂児の勝負曲はX JAPANの「紅」。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うことに。そんな二人がカラオケを通じて少しずつ打ち解けてきた頃、“ある事件”が起きてしまう。果たして二人の運命は!?
出演:綾野 剛 齋藤 潤
原作:和山やま(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:山下敦弘 脚本:野木亜紀子
衣装クレジット
コート 968,000円、シャツ 246,400円、パンツ 122,100円、シューズ参考商品/すべてヴェルサーチェ(ヴェルサーチェ ジャパン www.versace.jp) その他本人私物
2024.01.17(水)
文=相澤洋美
撮影=平松市聖
ヘアメイク=石邑麻由
スタイリング=三田真一(Kiki inc.)