時空の狭間に浮いているような、ザ・秘湯へ
●壁湯天然洞窟温泉 旅館 福元屋[大分/宝泉寺温泉]
めくるめくスケールの標高差に富み、現役火山がもたらす地熱エネルギーに満ちた九州の温泉避暑地、大分県九重。その山あいにひっそり、岩壁が川面に大きく迫り出す秘湯、その名も壁湯天然洞窟温泉がある。
物語は300年以上前、川で鹿が傷を癒す姿を見て、自噴する温泉が発見されたことから。明治初期に癒しと湯治の場として開かれ、地域に親しまれてきた。
せせらぎの音が体内まで響く中、ほの暗い泉に身を浸すと、岩の奥から、温かな湯が溢れ出てくるのがわかる。人肌に近いぬる湯だからか、じわり、ふわり、あたかも時空の狭間に浮いているような感覚。そんな神秘的な体験が、訪れる人を、現実の世界から遠く引き離してくれる。
その脇に立つポツンと一軒宿「福元屋」は、期待を裏切らないザ・秘湯の佇まい。深煎り色の梁や建具、灯るちょうちん、岩が積まれた内風呂……これらご主人が自ら設えたとか。
女将がこしらえる手間ひま料理といい、もはやファンタジーとしての田舎体験に、どっぷり耽れる。すべては、ご主人の「喜んで欲しい」という一心で。
壁湯天然洞窟温泉 旅館 福元屋
所在地 大分県玖珠郡九重町大字町田62-1
電話番号 0973-78-8754
ひとり料金 1泊2食つき20,900円~
ひとり対応 通年可
https://kabeyu.jp/
●JR九大本線豊後森駅よりバスまたはタクシーで約15分
秘湯、名宿、絶景サウナ……47都道府県から150以上の温泉宿を紹介する全文は、CREA Due「楽しいひとり温泉。2024」でお読みいただけます。
2023.12.18(月)
文=山村光春
写真=目野つぐみ
協力=九州観光機構