この記事の連載

 何かと行く機会が多い、新宿、渋谷、五反田、赤坂――。でも、何度となく通っているはずなのに、意外と行きつけの店がつくりにくい場所でもあります。

 そんななんだか落ち着かない駅にある「ちょうどいい」お店を、酒場ライターのパリッコさんに教えてもらう連載です。今回は、中目黒に来たらぜひ立ち寄りたいお店を紹介します。


老舗酒場が移転して

 東京を代表するハイソなイメージの街、中目黒にも、地元民を中心に愛される老舗酒場はある。1977年創業の「大衆割烹 藤八」。

 かつては駅を出て少し歩き、目黒川を越えたあたりの路地にひっそりと佇む、なんとも雰囲気のある店だった。ところが2018年、建物の老朽化などの理由で、山手通り沿いの商業ビルの2階に移転。かつての店の雰囲気は失われてしまうのかと寂しく思っていた。しかし移転後の初訪問時、メニューやテーブルなど、極力以前のものを残し、あの空間をそのまま移動させてきたような店内を見た時は、本当に嬉しかった。

 メニューは膨大で、粋な一品料理からシメのごはんものまで幅広くそろう。なかでも自家製の腸詰やはんぺんは看板メニュー。また、魚料理は特に充実していて、日替わりの刺身類も訪れるたびの楽しみのひとつだ。

2023.10.11(水)
文・撮影=パリッコ