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必ず食べて欲しい名物の「自家製はんぺん」

 藤八名物のなかでも個人的に外せないのが「自家製はんぺん」。これを初めて食べた時は、この世にこんなはんぺんがあったのか! と、大いに衝撃を受けた。

 白身魚と大和芋を合わせたという身はずっしりと厚く、しかし箸を差し込むと、その手ごたえは驚くほど柔らかい。まずはなにもつけずにそのままひと口。するとはんぺんは、まるでクリームのような食感でとろけてしまい、適度な塩気とともに、魚の甘さ、仕上げに加えられたかにの身の風味が口いっぱいに広がる。

 一度食べれば、その概念が変わってしまうはんぺん。こんな大衆価格で出してもらえることが申し訳ないくらいだ。

 また藤八は、「イタリア風ハムカツ」「アンチョビジャガバター」「モッツァレラチーズ磯辺揚げ」「ムール貝の白ワイン蒸し」など、気になる洋風メニューも豊富にある。品数が膨大なので、全品制覇など一生かけてもできないだろうけど、今日は初めてのメニューもひとついってみようかな。「生ハムエッグ」って、どんなのだろう?

 おぉ、こうきたか。まさに、ハムエッグの生ハム版。そこにパルメザンチーズとオリーブオイルがたっぷり。黄身を割って食べてみると、生ハムの味の深みが一般的なハムエッグとは別もので、ものすごく高級感がある。いいつまみだなぁ、これ。

 と、中目黒という街にありながら気取りが一切なく、ふらりと寄って一杯でも、わいわいと宴会でも、誰もがリラックスして過ごせる大衆酒場。このような形で残ってくれたことが、心の底からありがたい。

大衆割烹 藤八

所在地 東京都目黒区上目黒3-1-4 グリーンプラザ2F
電話 03-3710-8729
営業時間 16:00〜20:00(平日・祝前日)、15:00〜20:00(土曜、祝日)
定休日 日曜
Instagram @tohachi_nakameguro

パリッコ

酒場ライター・漫画家。酒場好きが高じて会社員から酒場ライターに転身。未知の大衆酒場、ちょっと怪しいとされる店にも果敢に訪れ、心のオアシスを発掘。酒場愛に溢れた文章やイラストは、吞兵衛の心をわしづかむ。酒カルチャー雑誌『酒場人』監修。著書に多数。新刊はスズキナオ氏との共著『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)ほか。
X(旧Twitter):@paricco

次の話を読む大きく姿を変え続ける池袋の街で70年以上もそこにあり続ける良心的酒場「ずぼら」

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2023.10.11(水)
文・撮影=パリッコ