中国ではドリンクショップで飲み物を買うことが生活の一部であり、1杯10-20元(約200円〜400円)程度の比較的手頃な価格で様々な味を楽しめる。各ドリンクショップは常に新商品やコラボ商品で消費者心理を動かし、話題に事欠かない。
今年の春から夏にかけて、中国のドリンクショップでよく見たのが「アボカドヨーグルト」。初見のインパクトがかなり強い、衝撃的なメニューだ。
1月の茉酸奶(MORE YOGURT)や沪上阿姨(AUNTEA JENNY)を皮切りに、5月ごろから喜茶(HEYTEA)、乐乐茶(LELECHA)、奈雪的茶(NAIXUE)、茶百道(ChaPanda)といった大手ドリンクショップで次々と新商品として登場した。
実はいくつかのドリンクショップでは2019年から断続的にアボカドを用いた飲料は発売されていた。しかし2023年1月に茉酸奶が1日約4万杯のアボカドヨーグルトが売れたことを発表したように、ここまで大々的に流行したのは初めてのことだろう。
2023年7月には続々と街でアボカドヨーグルト販売店が増えていたので、各社の流行から新商品開発までのスピードに驚かされた。
そもそも中国では、アボカド自体スーパーで1個6.5元(約130円)前後と日本とそう変わらないような高価格帯で販売されており、野菜が安い中国において特別な扱いである。2017年ごろに「スーパーフード」として認知され食物としてのブームが訪れたとされているが、日本における食生活へのカジュアルな根づき方に比べるとまだまだと言えるだろう。
一方で、中国人の生活においてヨーグルトの存在はかなり大きい。ヨーグルト専門のドリンクショップがいくつも存在するし、スーパーのヨーグルト売り場の大きさは目を見張るものがある。日本で見かけるフルーツのフレーバー以外にもキャラメルや棗、ピーチウーロン……と何とも多種多様なフレーバーが用意されている。
アボカドヨーグルトの突然の流行には、まだ中国社会に根づいているとは言えないアボカドという食材と、すでに馴染み深い食材であるヨーグルトが組み合わさったこと、そして中国の若者の健康志向の高まりが背景にあるのではないだろうか。
各ショップはアボカドの新鮮さやビフィズス菌の個数、ショ糖不使用、自然な味などをアピールしており、健康への訴求を前提にしていることがわかる。
2023.10.09(月)
文・写真=Ricai