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 一年で一番美しいとされる中秋の名月。ことしは9月29日(金)に満月を迎えます。

 お月見といったら日本では団子ですが、中国ではこの日を中秋節といい、味わうのは「月餅」、Moon cakeです。

 月餅といっても餡も形もさまざま。そこで、おそらく日本一月餅が集まる街・横浜中華街で見つけた、この秋食べたい月餅をご紹介します。秋限定品はもちろん、中華街は通年販売している月餅が多いのも特徴です。

 #2では、横浜中華街の取材・偏愛歴が10年以上というフードライター・嶺月香里さんが、味よし見た目よしの贈って喜ばれる&お茶請けにぴったりの月餅をご紹介。


縁起のいい獅子形の月餅は贈り物にも!

◆菜香新館

 お月様をかたどった月餅はまんまるの形がベーシックな中(たまに四角い月餅もみかけますが)、こちらは神獣の「お獅子」の形をした月餅です。

「かわいいだけではなく、中の餡はちゃんと蓮の実を使った本格的な蓮餡で、滑らかでいて繊細な餡のくちどけが楽しめます。定番の月餅よりも薄型なので餡が少なめに感じ、日本のお饅頭感覚で味わえるのもいい」(嶺月さん)

 漢方で蓮の実は、滋養強壮やストレス緩和などにいい素材とされています。縁起のいいお獅子の月餅で、夏の疲れをいやしてみてはいかが?

 中秋節の時期だけ、アヒルの塩卵が入った月餅も販売します。餡は蓮の実と、あずきの黒餡の2種。卵が2個入った大月餅(直径約8センチ)と、1個入りの中月餅(直径約6センチ)が揃います。

「日本人はつい黒餡を選びがちですが、中国本場では薬膳的にもいい蓮餡がスタンダード。蓮餡だけの月餅もよいものですが、塩卵入りは程よい塩気とほくっとした卵黄が蓮餡と交じり合い、独特のおいしさを奏でます」(嶺月さん)

 あんこに卵を入れるなんて! と食わず嫌いせず、ぜひこの美味を体験してみて。

 ちなみに卵が1個入ったものは夜空の月を、2個入りは浮かぶ月と水面に映った月を表現するといわれています。そんなエピソードを披露すれば、お月見もよりいっそう風情が高まります。

 菜香新館は、日本に飲茶ブームを引き起こしたとされる点心・広東料理の老舗です。月餅のレシピは初代の奥さんの味を今も守り続ける、広東省の正統派の味。油は控えめの製法で、体に沁みいるような優しい甘さが魅力です。

 月餅を印刷したかわいいクッションを発見! 3Dプリントなので、あんこの透け感まで再現しているのがすごい。サイズは中と小があって、緑や紫色もありますが、いちばん人気は月餅色の茶色だそう。ほおずりしたくなるほどソフトな手触りが快感です。

菜香新館(サイコウシンカン)

所在地 神奈川県横浜市中区山下町192
電話番号 045-664-3155
営業時間 ショップ11:30~21:30
定休日 火曜(祝日の場合は営業)
交通 みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩3分

2023.09.27(水)
文=嶺月香里
撮影=鈴木七絵