ちょっとハードボイルドな作品で“味変”してみる?
『NightS』

 次は、いくつかの物語が収められた作品集。表題作『NightS』とその後日譚のハードボイルドな世界観は『囀る…』と共通するもので、一方『リプライ』と名付けられた一連の物語は、『どうしても…』『それでも…』と同様に普通に仕事をする一般の社会人が主人公。つまり、ヨネダコウさんの作風の幅を凝縮して楽しめてしまう1冊でもあります。

NightS & 後日譚

 (ヤク)でも銃でも死体でもOKと評判の運び屋・唐島は、ある組の若頭補佐・穂積に仕事を依頼される。暗い夜の世界の片隅で、どこか影がある魅力的な男たちが化かし合い、追いかけっこを繰り広げる、ミステリアスでユーモアあふれる作品。後日譚も収録されていますが、さらなる続編、この二人の物語の顛末が気になる方は、電子版の『或る夜』(リブレ出版)をどうぞ。

感情スペクトル

 同級生の恋の相談に乗っているうちに……という、高校生が主人公の短編。

リプライ(連作)

 カーディーラーの整備士・関と、「笑わない」トップ営業マン・高見のお話。仕事を通じてより理解し合い、だんだんと距離が縮まっていく設定には現実味があり、何気ない日々の中で思いがけず募っていく想い、すれ違いの切なさに胸が苦しくなります。

2023.10.03(火)
文=寺尾真紀