軽やかで切ない恋物語から、“BLの真髄”ともいえるディープな名作まで…。BL界の大御所・ヨネダコウ作品を1作ずつ辿るとBLの魅力がわかるはず!
BLを読んだことがない、あるいは、少し興味はあるけれど手が出せなかった――。そんな読者の皆様に向けて、年間2000冊以上のBL作品を読む「BLソムリエ」寺尾真紀さんがヨネダコウさんの作品をご紹介します。
》BL初心者ならまずこの作品を読んでみて!『どうしても触れたくない』
》ハマってきたら作品集『NightS』でヨネダさんの作風を凝縮して楽しむ
》これなくしてBLマンガ史は語れない『囀る鳥は羽ばたかない』
BLを読み始めたらいつかは必ずたどり着く、そして一度読んだら心を捉えてやまない作品たち。BLファン層を対象にした賞やランキング上位の常連であるだけでなく、例えば女性誌が主催するマンガ賞(2015年)で大賞を受賞したり、音楽・俳優活動など幅広く活躍する福山雅治さんがラジオで「名作」と評したことが報道されるなど、BLになじみがない方も、もしかしたらこのカタカナ5文字の作家さんのお名前をどこかで目にされたことがあるかもしれません。
年に2,000冊を読破したBLソムリエが教える「BL作品を好きになる」ってどういうこと?
前回のBL特集でも、主人公の切ない想いに性別を超えて共感せずにはいられない「入門編」の作品として『それでも、やさしい恋をする』(2014年)、キャラクターの魅力や世界観が読者を惹きつける「長編の名作」として『囀る鳥は羽ばたかない』(連載中)を紹介しました。
いつBLと出会うかにもよりますが、自分の過去・経験との共通項、共感を見つけることが、BLを好きになる早道の一つかもしれないと思います。人によってBLの定義はさまざまですが、ごくシンプルに「男性が男性を愛す物語である」としたとき、ヨネダコウさんの物語で描かれる「同性を好きになる」ことで生じがちな葛藤には、いろいろな経験をしてきた大人だからこそより理解できるリアルさがあり、描かれる感情がリアルだからこそ、読む我々の心を揺り動かします。
また同時に、BLの世界に足を踏み入れたところから、よりディープな、BLの真髄といえるようなところまで作品でたどっていけるのも、ヨネダコウさんの作家としての魅力ではないでしょうか。そろそろBLの扉を開いてみようかな、という皆様に、こんな順番でヨネダコウさんの作品を体感してみては、という一例をご紹介したいと思います。
2023.10.03(火)
文=寺尾真紀