◆フォレノワール
「フォレノワール」は、長野県・中野市にある武六園のサワーチェリーを使い、パルフェと呼ばれる氷菓仕立てのデザートに。香り高いプラリネと混ぜ合わせたサクサクのフィヤンティーヌ(クレープ生地)に、トンカ豆とバニラが芳しいパルフェを重ね、サワーチェリーのコンポートとクレーム・シャンティイ・ショコラを。
散りばめられたカカオニブ入りのヌガチンとピーカンナッツのキャラメリゼ、周りを覆うチョコレート風味のシガレット生地が、それぞれに異なるクリスピーな食感と香ばしさやほろ苦さを添えています。お皿の上にはフランボワーズのパウダーやフレッシュなオレンジがあしらわれ、テーブルに運んだ後に、オレンジ果汁とキルシュを加えてフランベした、チェリー・ジュビレと呼ばれる熱々のサワーチェリーを添えて。
「熱いソースを熱い状態で提供し、冷たいものと一緒に楽しんでいただくというような、フランス料理で受け継がれるクラシカルなサービスによってもたらされる瞬間性は、デザートの醍醐味と言えます。キッチンを出た瞬間から、時間経過でひと口ごとに変化していく味わいを楽しむのも、大きな魅力だと思います」と、長江さんは話します。
さらに驚かされるのが、パルフェの口溶けと味わいの軽やかさ! 甘さやくどさに邪魔されることなく、トンカ豆とバニラの香りがふくよかに広がります。そしてサワーチェリーは、オレンジやキルシュの酸味や香りと混じり合って、ふっくら、華やかでやわらかな味わい。チョコレートの奥深い風味も加わって、口のなかで次々に現れる食感や味のハーモニーがおいしさを増幅させていくひと皿となっています。
「理想とするのは、それぞれの素材の一番いいところが引き出され、1+1+1=3ではなくて、5にも6にもなるような相乗効果のあるデザート」と語る、長江さん。そうした考えやアプローチには、レストランで長く重ねてきた経験が大きく影響を与えていると語ります。
「私が働いていたレストランではパティシエも料理人的な感覚を持ち、すでに加工されたピュレではなく、フレッシュな果物から調理してデザートをつくっていました。同じ果物でも日々状態が異なるので、見極めが必要ですし、配合や調理時間も果物に応じて調整しなければなりません。食材と真摯に向き合い、微妙な違いも感じ取れる繊細さを常に持っていることが必要であり、決してルーティンにしてはいけない。ルーティン、つまり機械的な仕事になれば細かいことまでケアしなくなり、味にブレが生じてしまいます。それではおもしろくもありません」
生地やクリーム、コンポートなど、同じパーツを組み立てる場合でも、その順番によっても味の印象は変わると言い、盛り付けるお皿や組み立ての順番を変えて、完成までにいく通りも試作するという長江さん。
「パリの三ツ星レストラン『ピエール・ガニェール』でシェフ・パティシエを務めた際にも、そうしたエクササイズを何度も重ねてきました。見た目ももちろん大切ですが、それを優先するあまり、味の組み立てが疎かになってしまうケースも。層の厚みや硬さ、温度など、ひとつひとつの細かいことがとても大切で、研究しなくてはいけないポイントだと考えています」と、長江さんは話します。
今回ご紹介した夏メニューの提供は9月14日(木)までですが、9月15日(金)からは秋メニューがスタート予定。長江さんがスイーツもセイボリーも手掛けるアフタヌーンティーも、提供が始まるとのこと、近隣の生産者が丹精こめてつくる食材も用いて秋の軽井沢で表現される、長江さんならではの上質感あふれるデザートとアフタヌーンティーに、期待が大きく膨らみます。
【イベント概要】
コラボレーションデザートセット KEIKO NAGAE meets 旧軽井沢
開催期間 2023年7月14日(金)~9月14日(木)
提供時間 10:00~19:00(L.O. 17:00) ※9月1日(金)からは10:00~18:00(L.O.17:00)
料金 すべて 3,300円、ドリンク(コーヒー、紅茶、ハーブティー)付き。グラスシャンパーニュ 1,430円 ※ともにサービス料10%別
クレソンリバーサイドストーリー旧軽井沢
所在地 ⻑野県北佐久郡軽井沢町軽井沢680-1
電話番号 0267-46-8037
営業時間 10:00~19:00(L.O. 17:00) ※9月1日(金)からは10:00~18:00(L.O.17:00)
定休日 不定休 ※ホームページ参照
https://www.cressonriver.jp/
●9月15日(金)より秋メニュー(デザート、アフタヌーンティー)提供予定。
2023.08.18(金)
文・撮影=瀬戸理恵子