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森山未來さんの山男と過ごすシーンは“癒やしの時間”

――凛と似ているなと思う部分はありましたか?

 私はいわゆる“悟り世代”なのですが、その世代の私が演じたからこそ、現実を直視しながらここではないどこかへ力強い一歩を踏み出す凛のような人物像が描けたのかもね、と最近言われて。自ら山へ行ってしまう凛と重なるというのは恐ろしくもありますが、現実を客観的に見てしまう、という部分で通じているのかな、と思います。

――今回は遠野弁にもチャレンジしていましたね。

 しっかりとした方言は初めてでとても不安でした。でも凛として生きることを考えたとき、方言はすごく大きい要素だなとも感じました。演じていくうちに方言に助けられたような感覚がわいてきて。方言を話すことで、自然と凛に寄り添うことができた気がします。

――難しい役柄だからこそ、そういった部分をきっかけに役を掴んでいけそうですよね。『山女』で山田さんが最も印象に残っているシーンはどこでしたか?

 森山未來さん演じる山男と森にいる時間が印象的でした。観ていただいたらわかると思うのですが、あの時間はすごく癒しじゃないですか……! もっと二人のシーンが長くていいんじゃないかと思ったくらい。映画全体の尺に比べたらそこまで長いシーンではないのですが、それだけ凛にとっては濃密な時間、大切な時間になったんだなと思うと、すごく好きですね。

――森山さんとはセリフのないお芝居でしたよね。難しくはなかったですか?

 森山さんがやっぱりすごい人なんだなといいますか(笑)。演じるのにセリフは必ずしも必要ないんだということを実感して、新しいお芝居を勉強させていただきました。

2023.07.06(木)
文=高橋琴美
写真=松岡一哲
ヘアメイク=菅長ふみ(Lila)
スタイリスト=中井彩乃