「尊氏よりも遥かに優秀な楠木正成、新田義貞、後醍醐天皇はみんな次々に滅んでいくのに、なぜか尊氏だけが最後まで生き残る。ということは、個の優秀さだけでは測れない何かが歴史の流れの中にはあるんでしょう。

 僕は平成元年に社会人になった世代ですが、当時の若者はすでに『日本はそんなに良くならない』と漠然と感じていた。社会人一年生の時、『これからは負けない戦いをしよう』と考えたことを覚えています。そういう部分が尊氏にもあるんだろうと思いますね」


かきねりょうすけ 1966年生まれ。『君たちに明日はない』で山本周五郎賞。『室町無頼』で本屋が選ぶ時代小説大賞。主著に『光秀の定理』『信長の原理』『涅槃』等。


(「オール讀物」6月号より)


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◆垣根涼介さんに聞く――「史上最も無能な将軍」足利尊氏はなぜ天下をとれたか

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2023.06.08(木)
文=「オール讀物」編集部