●新たな自分が開けたアイドルオタク役

――そして、今回『劇場版』が公開されるドラマ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」。人気コミックの実写化として、松村沙友理さん演じるヒロイン・えりぴよらと一緒に、アイドルグループ・ChamJamを応援するアイドルオタクの青年・基を演じています。

 もともとアニメやマンガが好きなこともあり、原作の実写化に関しては、「ファンの方が納得できるものにしたい!」という気持ちが強かったです。だから、まずは原作マンガとアニメ版を何回も観返して、そのときのインスピレーションを大切にしました。また、基は自分が知らない専門用語などを追っていくキャラなので、視聴者の方の目線に近い存在。そこも大切にすることを意識しました。

――また、女オタであるえりぴよと年季が入ったトップオタであるくまさ(ジャンボたかお)と基の3人の絶妙なバランスも見どころです。

 とても明るい作品のうえ、基の性格も明るくて、とても熱量があるキャラなのですが、僕自身は普段静かな人間なんです。だから、そのスイッチが切れないように、休憩中もずっとテンションを上げていました。しかも、ジャンボさんのファンだったこともあり、お二人にはとても変なキャラに見えてしまっていたかと思います(笑)。

――豊田さん自身にとって、どのような作品になったといえますか?

 ドラマから映画になった作品ということでいえば、この作品の前に巡査役を演じた「妖怪シェアハウス」で経験していたので、そこに対するプレッシャーや違和感みたいなものはありませんでした。ただ、基を演じながら、彼のとても純粋で、まっすぐな熱量みたいなものを感じることで、今までとは違う新たな自分が開けたような気がしました。

――現在公開中の『銀河鉄道の父』にも出演されています。役所広司さんがお父さん役、事務所の先輩でもある菅田将暉さんがお兄さん役という現場を経験されていかがでしたか?

 ド緊張しながら、偉大な先輩たちのお芝居から熱気を受けたり、現場での佇まいを学んだり、「これがプロフェッショナルだ!」というものを目の当たりにしました。いつか訪れる山場というか、試練みたいなものが早くやってきたと思いつつ、いろんなものを吸収させてもらいました。そして、そこで学んだものを、その後の『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の現場にどう生かすかということが課題でもありました。自分の中では、そんな2本の映画が公開される今年がターニングポイントになるような気がしています。

●常に知的好奇心を持つ人間になりたい

――また、現在放送中のドラマ「それってパクリじゃないですか?」でも、芳根京子さん演じるヒロインが勤める飲料メーカーの同僚役を演じられています。

 特許という身近なのに、あまり知らないものについての話なので、撮影前にはいろいろと勉強しました。ドラマの内容はもちろん、セットもすごいですし、なにより、芳根さんを始め、重岡(大毅)さん、常盤(貴子)さんなど、たくさん経験を積まれている方がいる中で、お芝居できていることが楽しいです。それに、中島(悟)監督(「これは経費で落ちません!」)が、「豊田もう一回!」などと導いてくれるので、「もっと成長したい」と思っています。

――俳優としての、今後の希望や展望を、また憧れている人を教えてください。

 先日、紀里谷和明監督の『世界の終わりから』を観て、今までにない素晴らしい映画体験をしたんです。この映画のように、独特な世界観を持っている作品に出たいと思いましたし、観た後に余韻を残すような役者になりたいと強く思いました。今まで共演させていただいた方、みなさん魅力的な方ばかりですが、役所さん、菅田さんはもちろん、「妖怪シェアハウス」で共演させていただいた毎熊克哉さんにも憧れています。また、知的好奇心を常に持ちながら、物事を見ることができる人間になりたいです。

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豊田裕大(とよだ・ゆうだい)

1999年4月10日生まれ。神奈川県出身。2019年、「第34回メンズノンノ モデルオーディション」を機に専属モデルに。21年、ドラマ「じゃない方の彼女」で俳優デビューし、『レッドブリッジ』『レッドブリッジビギニング』(22年)では映画初主演。現在、映画『銀河鉄道の父』が公開中。ドラマ「それってパクリじゃないですか?」が放送中。

映画『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』

岡山のローカル地下アイドルグループ「ChamJam」の舞菜(伊礼姫奈)にトキメキを感じた、えりぴよ(松村沙友理)。オタク仲間のくまさ(ジャンボたかお)と基(豊田裕大)とともに推し活する中、「ChamJam」が東京進出することに。一方、舞菜は自身の人気が伸び悩んでいることに葛藤していた。

2023年5月12日(金)より全国公開
https://oshibudo-movie.com/

Column

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2023.05.12(金)
文=くれい響
写真=平松市聖
ヘアメイク=速水昭仁
スタイリスト=秋山貴紀(A Inc.)