——長澤さんが昨年出演されたドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』は、大きな反響を呼びました。あのドラマを通して、冤罪の問題についてはじめて考えさせられた人は多いと思います。普段以上の手応えを感じられたのでは？
『エルピス』への反響
長澤 自分が興味を持ったことに対して、ほかにも興味を持つ方がいてくださったのかなとは思いますが、毎回常に必死にやっているだけなので、「思ったとおり大反響だ！」なんて感じは全くないですよ(笑)。
仕掛けているのは、プロデューサーや監督の方々なので、その方々がすごいんだと思いますね。
——なるほど。では、俳優を続けているモチベーションはどこにあるのでしょう？
長澤 観てくださった方から、「あの作品、面白かったよ」とか「すごくハマった」と言っていただくのはやっぱり嬉しいので、それに限るなあと思いながら続けられています。
『ロストケア』に松山さんが企画段階から関わってこられたように、俳優もプロデュースしたり監督したりするのが当たり前になってきていますよね。自発的に作品に取り組むことは、以前よりはやりやすくなってきたんだろうと思います。そういうところも楽しみにしていけたらいいですね。自分自身がステップアップしていけるのは、この仕事の面白さなのかなと思います。
——では、いつか長澤さんプロデュースの作品も出てくるかもしれない？
長澤 脚本は書けないけど、プロットを書けるようになったらいいなとずっと思っています。考えるのはすごく好きなんですよね。
——やりたいテーマはあるのですか？
長澤 ゴルフかな。
松山 へー！ 好きなんだっけ？
長澤 ゴルフは全然やってないんですけど(笑)、先輩の俳優がゴルフにハマっていらして、その理由を聞いたら面白かったんです。
——松山さんはいかがですか？ 俳優を続けられる理由は？
松山 僕は俳優以外の仕事も始めたので、目的自体が少し変わってきていますね。
——松山さんは昨年、廃棄される獣皮などのアップサイクルを目的としたブランド「momiji」を立ち上げられました。ほかにも障害のある方の雇用促進を行っているQUONチョコレートを見学されたりなど、社会福祉に強い関心をお持ちになっていらっしゃいます。
松山 俳優を続けることで、俳優以外の活動を宣伝できて、働きづらい人たちのために何かができるかもしれない。そのためには、一生懸命お芝居をして、うまくならなきゃと思います(笑)。
誰かの救いになるかもしれないから、力を維持しながら、いろんな活動をやっていきたいなと思います。
『ロストケア』
監督：前田哲
原作：葉間中顕 『ロスト・ケア』(光文社文庫刊)
脚本：龍居由佳里、前田哲
出演：松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、加藤菜津、やす(ずん)、岩谷健司、井上肇、綾戸智恵、梶原善、藤田弓子、柄本明
配給：東京テアトル、日活
©2023「ロストケア」製作委員会
全国公開中
https://lost-care.com/
松山ケンイチ(まつやま・けんいち)
1985年生まれ、青森県出身。2001年、ホリプロ×Boon×PARCOの共同企画オーディション「New Style Audition」でグランプリを獲得。翌年、俳優デビュー。12年にNHK大河ドラマ「平清盛」で主演。16年に映画『聖の青春』で第40回日本アカデミー賞優秀男優賞、第59回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞。最近の主な出演映画に『BLUE ／ブルー』(21年)、『ノイズ』、『大河への道』、『川っぺりムコリッタ』(すべて22年)、ドラマに大河ドラマ『どうする家康』(NHK 23年)、『100万回言えばよかった』(TBS 23年)など。映画『大名倒産』が6月23日に公開。
長澤まさみ(ながさわ・まさみ)
1987年生まれ、静岡県出身。2000年第５回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリを受賞。同年、俳優デビュー。20年公開の『MOTHER マザー』で、第44回日本アカデミー賞女優賞を受賞。最近の主な出演映画に『すばらしき世界』、『マスカレード・ナイト』(ともに21年)、『コンフィデンスマンJP 英雄編』、『シン・ウルトラマン』、『百花』(すべて22年)、ドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』(22年 カンテレ・フジテレビ系)など。現在、『松尾スズキと30分強の女優』(WOWOW)に出演中。
2023.03.24(金)
文＝黒瀬朋子
撮影＝釜谷洋史
松山ケンイチさん
ヘアメイク＝勇見 勝彦（KATSUHIKO YUHMI、THYMON Inc.）
スタイリスト＝五十嵐 堂寿 （Takahisa Igarashi）
長澤まさみさん
ヘアメイク＝根本 亜沙美（Asami Nemoto）
スタイリスト＝MIYUKI UESUGI (SENSE OF HUMOUR)
