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 介護の現実や人間の尊厳について考えさせられる映画『ロストケア』(前田哲監督)に出演している松山ケンイチさんと長澤まさみさん。社会問題をテーマにした作品の出演が続いているおふたりに、俳優業について語っていただきました。


——松山さんは、返還直前の沖縄をテーマにした舞台『hanaー1970、 コザが燃えた日ー』や、ゼロ葬や孤独の問題に触れた映画『川っぺりムコリッタ』にご出演。長澤さんも育児放棄の母を描いた『MOTHER』に出られて、昨年のドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』は冤罪とジャーナリズムの問題に鋭く切り込み、大きな話題を呼びました。おふたりは、社会派の作品を積極的に選んでいらっしゃるのですか?

松山 自分が知りたいと思うことを知ることができるので、僕はそういうタイプの作品に惹かれますね。そちら側にアンテナを張っているので、目の前に現れやすいし、キャッチしやすいんだと思います。

——社会問題を伝えなければという、使命みたいなものを感じているのですか?

松山 いや、そういうのは全然ないんですよ。ただ、知りたいだけです。介護のような題材もなかなか話題にならないし、誰も教えてくれなかったりするから、学びたいんです。

長澤 私も社会問題に触れた作品は好きかもしれません。何ができるわけではないけれど、知ることはやっぱり大切だなと思います。いろんな状況で生きている人がいるという、学びのひとつとして、そういうタイプの作品に興味を引かれます。ディスカッションというほどではありませんが、作品のテーマになった問題について母とよく話します。はっきり意見を言うタイプなので(笑)、話すのは好きですね。

——『ロストケア』に関わることで、介護や正しい老後の過ごし方について、考え方に変化はありましたか?

長澤 正しさは誰にもわからないですよね。生活水準の違いがあったり、そうしたくてもできない場合もあります。母のお友達に介護で大変な思いをされている方が何人かいらっしゃって、友達同士で話をし合うことで発散しているそうです。そういう助け合いっていいなと思います。女性は強いですよね。

2023.03.24(金)
文=黒瀬朋子
撮影=釜谷洋史

松山ケンイチさん
ヘアメイク=勇見 勝彦(KATSUHIKO YUHMI、THYMON Inc.)
スタイリスト=五十嵐 堂寿 (Takahisa Igarashi)

長澤まさみさん
ヘアメイク=根本 亜沙美(Asami Nemoto)
スタイリスト=MIYUKI UESUGI (SENSE OF HUMOUR)