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RMさんにお礼を言おうと思います

 『別れる決心』の魅力の一つは脚本の面白さ。前半と後半でガラッと印象が変わってくるのも特徴的だ。『お嬢さん』、『親切なクムジャさん』など、多くのパク・チャヌク作品でコラボレーションをしてきたチョン・ソギョンが今回も共同で脚本を執筆。BTSのRMは、テレビ番組で彼女と対談をするほど映画に入れ込んでいる。ここからは、昨年末に来日した際のパク・チャヌクの発言をお届けしよう。

――韓国ではこの映画の脚本がベストセラーになり、決めゼリフがSNSで流行しています。BTSのRMさんも大ハマリしていて、Instagramで映画のセリフを話す映像を投稿していますね。

 RMさんは自分でお金を出して何度も本作を観てくれたようで、本当に嬉しいです。RMさんに次にお会いする際には、お礼を言おうと思います。この映画は実は、古典的な映画のスタイルをとっているんです。そういう映画が、私の過去の刺激的な作品よりも、好評を博しているということが非常に興味深いですね。人を愛する感情や別れの辛さというものは、どの国のどの世代にも共通するものであると再確認することができました。

――撮影現場で心掛けていることなどはありますか?

 対話ですね。私の作品を見た方は、私が一人で色々なことにこだわって、周りの意見を聞かないような人間だと思われるかもしれませんが、実は私は誰よりもキャスト、スタッフと話をして彼らの話をよく聞きます。ディスカッションすることでそこから良いものを選択することができるし、そこから自分の考えが発展成長もする。これはとても重要なことです。

――最後にこれから観る方々へ一言お願いします。

 この映画を見て観客の皆さんが笑ってくれたら、私は幸せです。ユーモアというものは言語の壁を越えるのが難しいですが、そのユーモアの部分を外国の皆さんが笑ってくださるということは、この映画で描かれているユーモアが通じたということ。皆さんもこの映画を見て面白いと感じたら、躊躇することなく笑ってくださいね。

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パク・チャヌク

1963年、韓国ソウル生まれ。大学在学中から映画評論家として活動し、1992年の『月は…太陽が見る夢』で監督に。ポリティカル・サスペンス『JSA』(00)は当時の韓国歴代興収記録を更新し、日本でも大ヒット。主な作品に『復讐者に憐れみを」(02)、『オールド・ボーイ』(04)、『親切なクムジャさん』(05)、『サイボーグでも大丈夫』(06)、『渇き』(09)、『お嬢さん』(16)など。『イノセント・ガーデン』(13)ではハリウッド進出を果たした。

映画『別れる決心』

海と山の街、釜山。男性が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑いを抱く。取り調べが進む中、いつしかヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたへジュンに特別な想いを抱き始める。やがてソレの夫殺しの容疑は晴れるが、それは“愛の迷路”のはじまりだった。

監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ
提供:ハピネットファントム・スタジオ、WOWOW
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/wakare-movie/

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2023.02.17(金)
文=石津文子