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 長崎と言えば、歴史の教科書で習った隠れキリシタンや潜伏キリシタンという印象的なワードから思い出されるように、禁教期間にこっそりと信仰を続けてきた地域があることで知られています。

 その中のひとつが外海の出津集落。潜伏キリシタンの小さな信仰組織が力を合わせて、聖画や教会暦などを密かに伝承。信仰を続けた地域です。

 1882年にド・ロ神父が出津教会を建設したことで、キリスト教信者として堂々と生活できるようになり、潜伏期間は終了しました。

 そのような歴史をもつ出津教会堂や旧出津救助院のある外海地区は、集落全体が世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産になっています。加えて「長崎市外海の石積集落景観」として国の重要文化的景観に選定。

 当時の人々の暮らしを想像しながら訪れてみると、より深い理解につながるかもしれません。

» 「出津教会堂」
» 「旧出津救助院」
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» 「長崎市遠藤周作文学館」


ド・ロ神父自ら設計・工事監理を行って建てた、祈りの場

 1879年に長崎県の西彼杵半島南西部にあたる外海地方に赴任したフランス人宣教師がマルコ・マリ・ド・ロ神父です。このド・ロ神父が1882年に自ら設計、工事監理を行って完成したのが出津教会堂になります。

 その後、1891年と1909年に増改築を行い、現在の姿に。木造平家で、外海に面した場所にあるため、強い海風にも耐えられるよう屋根が低く設計されているのが特徴です。漆喰の白い外壁が美しく、清廉な雰囲気をたたえています。

 1972年に長崎県の指定有形文化財となり、2011年には国の重要文化財に指定されました。

出津教会堂

所在地 長崎県長崎市西出津町2633
電話番号 095-823-7650(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター)
拝観時間 9:00~17:00(12:00~13:00を除く)
※ミサや冠婚葬祭時には不可の場合もあります。
※閉まっている場合もあります。
※第1・第3日曜日はミサのために10:00まで堂内見学はできません。
※見学を希望する際は事前に連絡が必要。
定休日 無休
拝観料 無料

住民の暮らしを向上させるための福祉施設

 ド・ロ神父が、貧しい暮らしを強いられていた地域の住民を救うために、私財を投じて設立した授産施設が旧出津救助院です。授産施設とは社会福祉施設の一種で、なんらかの事情を抱えた人たちに、職に就いたり技能を習得するための機会を与えて、自立や生活の安定を促すための場所。

 建築工事も授産活動のひとつで、旧製粉工場や薬局、授産場、マカロニ工場が作られました。車で10分の場所にはド・ロ神父たちが開墾した畑もあります。畑では季節によって茶摘みや芋掘り体験もできますので、参加すれば、より思い出深い旅になりそうです。

授産場が当時の住民の生活を物語る

 施設の中心的な建物が、1883年に建設された授産場になります。1階が作業場で、綿織物の製糸や製織、染色、そうめんやパンの製造、醤油の醸造が行われていました。

 2階は修道女の生活の場として使われていました。現在は祈りの場となり、コンサートや講演会なども行われます。

 また1階の外側は、目地に赤土を混ぜた漆喰を使った、通称“ド・ロ壁”と呼ばれる石積みの壁になっています。100年以上経った今でも健在なんです。

旧出津救助院

所在地 長崎県長崎市西出津町2696番地1
電話番号 095-823-7650(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター)
開館時間 9:00~17:00、日曜、8月15日、11月7日、12月25日11:00~17:00(いずれも最終入館16:30)
入場料 一般400円、中学生・高校生250円、小学生以下200円
定休日 月曜(祝日の場合は翌日) ※12月29日~1月3日はお休みです。
https://shitsu-kyujoin.com/

2022.12.30(金)
文・写真=石川博也