この記事の連載

誰にでもイヤなことは起こる

──考え方次第で何事もポジティブに変わる、ということですね。

 誰にでも、人生でイヤなことや大変なことって起こるんですよ。僕にだって、「こんなに一生懸命、真面目に生きているのに、なんでだろう」と思うことが次々と起こります(笑)。

 でも、それをネガティブにとらえても、ポジティブにとらえても、結局現実ってひとつしかないんですよね。

 例えば、コロナ禍でツアーが全部中止になったとき、「こんなに準備したのに全部中止になるなんて」とネガティブにとらえるか、「さらにブラッシュアップしていいものをお届けできる時間をもらった」とポジティブにとらえるかで、その後の展開が変わってくると僕は思います。

「黄金の60代」と掲げてから10年近く経ち、人生を黄金色に輝かせるためにいろいろなことを実行してきましたが、「これから最高の時がやってくるんだ」とプロセスを楽しみながら過ごしてきたことで、60代後半に入った頃から、ようやく言葉通りの実感が伴ってきたように感じています。何かひとつだけで魔法のように人生が光輝くなんてことはありませんよ。コツコツ積み重ねるしかないんです。

──「黄金の60代」の次は、「プラチナの70代」とおっしゃっています。

 自分がこの先どういうふうに老いていくんだろうかというネガティブな意識は、今はありません。ありがたいことに、トレーニングで体を動かしているせいか、歩けなくなるとか、背中が丸まってくるというイメージがないので、おそらく僕の内面も同じように前向きなのだと思います。

「郷ひろみ」って、僕にとってすごく魅力的な人間なんです。一人の人生のなかで、天職というのを見つけるのが難しいとは思うんですが、僕はいつの頃からか、「これは天職」といえるものがイコール「郷ひろみ」という生き方だと思うようになりました。なので、僕の目標はと訊かれたら、「“郷ひろみ”に遅れを取ることなく、一緒に歩きたい」ということなんです。

 だから僕はいつも「これは郷ひろみならするの? しないの?」と問い続けているのかもしれません。だって、他人と自分を比較するのはナンセンスじゃないですか。他人と比較しなければ、卑屈な劣等感を抱くことも、間違った優越感に浸ることもないですし、そもそも「郷ひろみ」なら他人と比べるのではなく、自分自身と比較するでしょうから。

 「郷ひろみなら……」と問いかければ自ずと答えは出てきて、そこからまた、一緒に歩いていける。この時間をずっと続けていくことが、いまの僕の目標ですね。

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2022.12.25(日)
文=相澤洋美