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 吉田鋼太郎さんが演出、ならびに2役の出演を務める舞台『ジョン王』が12月26日(月)より開幕する。本作は、2020年に緊急事態宣言のため中止になってしまった舞台の満を持しての上演となっており、吉田さんをはじめとするカンパニーの強い思いが公演に結びついた。

 また、『ジョン王』は初代芸術監督の蜷川幸雄さんのもと始まった彩の国シェイクスピア・シリーズのトリを飾る1作でもある。シリーズ2代目芸術監督に就任した吉田さんにとって、特別な上演となるに違いない。

 CREA WEBでは、稽古が始まったばかりという吉田さんに前後篇でインタビューを実施。後篇では、普段見られない俳優の顔が見られるいうシェイクスピア作品ならではの魅力や、16年ぶりにシリーズに復帰する小栗 旬さんに寄せる期待まで語っていただいた。

» 前篇 今の世を映し出した『ジョン王』はこの機を逃したらもう観られないかも。吉田鋼太郎が語る作品の魅力を読む


僕が演出家として、血気盛んな頃の小栗くんをお見せしますよ

――『ジョン王』で生命力とユーモアにあふれ、世の中をシニカルに見つめる若者“私生児フィリップ”を、16年ぶりにシリーズに復帰する小栗 旬さんが演じます。今、稽古場では小栗さんとどんなやり取りをされていますか?

 小栗くんは今、『鎌倉殿の13人』で重厚な演技を披露して、各方面から評価をいただいている状態ですよね。けど、『ジョン王』では今の落ち着いている小栗くんじゃなくて、小栗くんが若かった頃…蜷川(幸雄)さんに怒られたりというようなことがあった血気盛んな頃の小栗くんを、もう1回見せたいなと思っています。

――もともと2007年の『お気に召すまま』で蜷川さんから依頼され、小栗さんにシェイクスピアを教えたのが吉田さんですよね。

 そうそう、そうなんですよ。

――当時から今を思うと、小栗さんも変わられたのかと思います。今の小栗さんを演出家の吉田さんはどうご覧になっていますか?

 今回、小栗くんは久しぶりのシェイクスピアなんです。今は、立ち位置や動きを決めているような立ち稽古の段階なんですね。だから、どんな風にセリフを言ってくれるかの真髄を発揮するまで稽古がいっていないので、まだ本域ではしゃべっていない状態というんですかね。たぶんこれから見せてくれるであろうと思っているので、今ワクワクして待っている感じですね。

『ジョン王』は『ハムレット』に匹敵する……はずです(笑)

――見どころはどのあたりだと予想しますか?

 小栗くん演じるフィリップの私生児としての面と一人の青年としての面、成長していく姿が大変面白いだろうと思っています。フィリップの独白が、『ハムレット』並みに4つか5つあるんですね。その独白ひとつひとつが非常によくできていて、今自分はどういう状況にあるのか、じゃあこれから何をすればいいのかを語るわけですけれども、小栗くんがこれからそれを喋っていくわけです。楽しみですよね。

 それぞれの独白では、沸き起こっていく感情、使命感、挫折感…いろいろなものが含まれると思います。もう『ハムレット』に匹敵する…とまではなかなか言えませんけど(笑)、それくらいの役ではないかと思われるくらい、私生児フィリップという役はとっても素晴らしい役です。

――本番が楽しみです。プライベートでも仲良しなおふたりですが、最近のエピソードなどはありますか?

 最近というか少し前ですけど、小栗くんとごはんを食べるときに、僕がちょっと若々しいスタジャンを着て行ったんですよ。そうしたら「なんでそんなの着てるの? 鋼太郎さん、似合うと思ってる?」みたいなことを言われて…。「ちょっと俺、着てみるわ。あれ? 俺、似合うじゃん!」と言って、そのスタジャンを持っていかれましたね…。

――プレゼントされたんですね(笑)。

 してないでしょ! 持っていかれたんですよ(笑)。

2022.12.19(月)
文=赤山恭子
写真=松本輝一
ヘアメイク=吉田美幸
スタイリスト=尾関寛子