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「定番」のボーダーを全く着なくなった

――「定番は不変ではなく、変わっていくものである」と……。

 そうです。そもそも、いわゆる「定番」と言われている物が自分にも似合うとは限りませんし、年齢を重ねて「定番」がしっくりこなくなったと感じることってありますよね。

 たとえば定番柄の代表格みたいな印象があるボーダー。私も好きで頻繁に着ていた時期がありましたが、いまはまったく着なくなりました。定番だって、気まぐれでいいと思います。

 とくに、ここ数年は世の中が大きく変わりました。当たり前だと思っていたことが当たり前でなくなった時代の中で、いままで良いと思っていた洋服やアイテムを手放す軽やかさも大切だと思っています。

 私は、物を買うときは恋愛と同じでインスピレーションをすごく大切にするので、「好き」と思って買ったものをそう簡単に嫌いになったり、手放したりできません。だからといって「ずっと持っていなくてはいけない」と、とらわれすぎると苦しくなるので、軽やかに、そしてしなやかに居続けることを意識しています。

 もちろん「定番」たちのなかには、ずっと変わらずに好きな物もあります。若い頃にパリの本店で一生懸命背伸びして買ったCHANELやHERMESのアイテムは、30年以上経ったいまでも、ワードローブの中で寝かせたり起こしたりしながら大切に付き合っています。

――自分なりの「定番」というのは、どうやって見つければいいのでしょうか?

 「これだ」というものをしっかりと自分の目で選び、実際にお金を出して手に入れ、時間をかけて少しずつ向き合っていくことでしょうか。

 「あの人が着ているから安心」といった選び方もあると思いますが、自分でしっかり選んでいない服やアイテムは、結局身につけなくなってしまいます。「いいと思って買ったけどダメだった」という経験を何度も重ねる中で、自分に合う物、自分が心地いいと思える物や場所が見つかっていくと思います。

 結局は「失敗を怖れずに、自分の目や感覚で覚悟を持って選択する」ということに尽きるのかもしれません。

2022.10.19(水)
文=相澤洋美
撮影=鈴木七絵