この記事の連載

 服飾ディレクター、アタッシュ・ド・プレスとして第一線で活躍し続ける岡本敬子さん。「大人になるほど、好きに着る」がモットーの岡本さんがInstagramで紹介する日常のワードローブは、大人の女性たちの注目の的。自らのブランド「KO」にも熱量の高いファンが多くいます。

 そんな岡本さんが、3冊目の著書となる『私の定番』を刊行しました。ファッションを愛し、日々の暮らしを楽しんでいる岡本さんの「定番」についてお聞きしました。(全2回の1回目。後編を読む)


誰かが決めた「定番」は、私にはしっくりきません。

――岡本さんは、いつもデザイン性の高いファッションを着こなしている印象です。岡本さんの考える「定番」について教えてください。

 私の定番は、世間で言うところの「定番」とは、明らかに違います。でも、誰かが決めた「定番」は、私にとってはしっくりきません。私のワードローブを眺めてみても、私だけの心がときめく個人的な趣味趣向のアイテムが多いので、ほかの誰かにとっては不思議なセレクトに見えるかもしれませんが、私にとってはそれが「定番」です。

 たとえ万人受けするアイテムではないとしても、一人ひとり「定番」が違うからこそ、見ていて楽しく、着ていて面白いのではないかと思います。

 一方で、同型で色違いや同じものを2枚という買い方をすることも多く、日々のスタイリングこそ違っても、気に入るとそればかり着ている、ということもあります。それも「私の定番」の一部です。

――万人受けするのが「定番」だと思っていました。人それぞれ違っていいんですね。

 むしろ私は、「定番」こそ、人それぞれ違うのが当たり前だと思っています。

 世の中や人の目を意識した「定番」ではなく、自分は何が好きで、何をよく使っているかが大事だと思うんです。だから、世の中が定めた「定番」に合わせることや、ずっと同じファッションを着続けることが「定番」ではないと思います。

 それに、「これが定番」とガチガチに決め込むよりも、その時の気分や年齢にあわせて、自分の価値基準で決めたほうが、ずっと楽しいですよ。

2022.10.19(水)
文=相澤洋美
撮影=鈴木七絵