この記事の連載
- 岡本敬子さんインタビュー #1
- 岡本敬子さん #2
海の近くの日本家屋に引っ越して「定番」を手放した
――“覚悟”ですね。岡本さんでも失敗はあるんですか?
もちろん、失敗だらけですよ。若い頃は流行に飛びついては失敗して、自分でも何がほしいのか、何が着たいのかがわからなくなった時期もありました。
でも失敗や年齢を重ねたからこそ、見える景色もあります。私の場合は、30代で海の近くの築60年の古い日本家屋へ引っ越したことが転機となりました。
潮風と湿気で、東京から持っていったものがすべてカビたり錆びたりして処分する羽目になったんです。お気に入りの「定番」もたくさんあったのですが、そもそも海の近くで暮らすのに、都心で着ていたような革の服やラグジュアリーな靴はそぐわないし、流行のアイテムもしっくりこない。だったら、この家や暮らしに合わせて家具も服も手放したり揃えたりしようと、柔軟にリセットしました。
その結果、いまでも「定番」となっている竹かごや、自然素材の物にめぐりあうことができたと思っています。
人って、失敗しないとアップデートできないと思うんですよ。間違わないと、自分が間違っていることにも気づかずにそのまま古い人になってしまうので、どんどん失敗して、アップデートし続けていくことが大事だと思います。
――今回、キャップやスニーカーが「定番」として入っていたのも「アップデート」ですか?
そうですね、生活が変化したことで、これまで縁がなかった事や物が毎日のメインアイテムになったり、日常になったりするのは、私は自分自身のアップデートでもあると思っています。
たとえばキャップは、コロナ禍でマスクありきのスタイリングを考えるようになった時に、意外にしっくりきたのがキッカケで「定番」化したアイテムです。
スニーカーもコロナ禍やライフスタイルの変化で、歩くことが生活の基盤になったことで、オンオフ問わず活躍するアイテムになりました。軽やかに歩いていると、いままで気づかなかった風景が見えてきたりして、心に余裕もできたように感じます。
2022.10.19(水)
文=相澤洋美
撮影=鈴木七絵