まず、聞いてみることが大事だと思う

――もし、ドラマ前半の歩実に、「夫は自分に無関心だ。だからか元カレに会いに行ってしまった。どうしよう?」と相談されたら、お台場の母(バラエティ番組内で、恋愛のプロとして松本人志によって命名)としては、どう応えますか?

 あの番組の反響が大きく、ありがたいです(笑)。“母”としては、元カレに会いに行った歩実には、“そういうこともあるよね”と言うでしょうね。でも、“それよりもまず、旦那に聞いてみなよ”と言いたい。何でもそうだと思うのですが、例えば私も10代の頃は、親は叱るもの、ダメだと言うものだと決めつけていたので、“誰々ちゃんの家に泊まりに行きたい”と素直に言えなかった。でも、もしあの時、自分がプレゼン上手だったら、親も“いいよ、行ってきな”と言っていたかもしれない。自分で可能性を潰していたな、と。だからまず、聞いてみることが全てにおいてとても大事だと思います。

――言葉に出してみないと分からないということも、このドラマを通して感じさせてくれますね。

 誰かが今、絶望していたとします。でも、今いるところは、まだ信じられる場所かもしれない、とも思うんですよね。今、いる場所を、一度は信じてみてもいいんじゃないかな、と。そんなことを、この作品で思いました。もちろん本当にダメな場合は、頑張らなくてもいい。でも、一度は信じてみてもいいと思います。

――劇中、カメラマンを目指す光太が、“自分は(周りの天才たちに比べ)普通過ぎる”と悩んでいました。貫地谷さんはこれまで、周りの人やその才能と比較し、何か思い悩んだ時期や物事はありましたか?

 私、本当に普通なんです。でも、普通であることに落ち込んだことはなく、それが自分の良さだと思っています。この自己肯定感は、親から与えられたものだと思いますが……。ただ、私は根っから明るいし、「本当に明るいね」と周りからも言われるので、女優としては陰な部分があった方がいいのにな、と少しだけ悩んだこともありました。

 ただ我が家は、母も父も家族全員が明るい。しかも私のことが好きすぎて、いまだに出演した作品をみせると、毎回“お前って天才だなぁ~”って言うんですよ!! そういう風に小さな頃から、自己肯定感を植え付けられてきているんです(笑)。

『5つの歌詩(うた)』

©2022 東北新社

2022年7月7日(木)スターチャンネルEXにて独占配信中
8月13日(土)BS10 スターチャンネルにてTV初放送
音楽:DREAMS COME TRUE
脚本・総監修:岡田惠和 脚本:渡邉真子、濱田真和
製作:東北新社/MMJ ©2022 東北新社 
https://www.star-ch.jp/dreamscometrue/

貫地谷しほり(かんじや・しほり)

1985年12月12日生まれ。東京都出身。映画『スウィングガールズ』で注目を集め、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』で初主演。主演映画『くちづけ』でブルーリボン賞主演女優賞受賞。8月5日(金)から、こまつ座 第143回公演 『頭痛肩こり樋口一葉』が待機中。

2022.07.07(木)
文=折田千鶴子
写真=鈴木七絵
ヘアメイク=北 一騎
スタイリスト=mick(Koa Hole inc.)