TRIP 6. メルボルンで多彩なアートを楽しもう!
旅に欠かせない要素といえば、その土地のミュージアムやギャラリーを訪ねてアートにふれる時間。オーストラリアの人気都市には、旅人の心を弾ませる素敵なアートスポットがたくさんあります。
世界遺産の王立展示館(ロイヤル・エキシビション・ビルディング)をはじめ、セント・パトリック大聖堂、オールド・トレジャリー・ビルディングなど、街の歴史を見守ってきた美しい建築が数多く残されているメルボルン。
1854年に開場した「プリンセス・シアター」をはじめ、壮麗な空間が素敵な劇場も多く、芸術を楽しむのに最高の街です。さらに、中心街にはストリートアートがあふれるエリアもあるなど、まるで街自体がひとつのミュージアムのようです。
この街の芸術文化の中心地といえば、ヤラ川の南岸サウスバンク地区。オーストラリア現代アート・センター(ACCA)、メルボルン・リサイタル・センターをはじめ、ギャラリーやシアターがずらり。
なかでも芸術の殿堂というべき存在が、アート・センター・メルボルン。
クイーン・ビクトリア・ガーデンの向かい側に位置し、コンサートホール、小劇場、ミュージアムなどからなる複合施設で、スカートをひるがえしたバレリーナをイメージさせる尖塔は、このエリアのランドマークとなっています。
そして、このアート・センターに隣接するのが、ビクトリア国立美術館 (NGV International)。威風堂々とした建築も壮観なナショナルギャラリーです。
企画展などの一部展示を除いて、入館は基本的に無料。館内に入るとまずは《バルーンドッグ》でおなじみ、ジェフ・クーンズさん作《Venus 2016-20》がお出迎え。
建築の見どころは、館内のステンドグラス。オーストラリアのアーティスト、レオナルド・フレンチさんの作品で、直下にあるベンチソファに寝そべって鑑賞する人も。降り注ぐカラフルな光に包まれて、とても気持ちいいです。
国内外の絵画や彫刻、工芸品など約7万点以上を収蔵するNGV。オーストラリア最大級を誇ります。
19世紀のゴールドラッシュで巨万の富を築いた大富豪たちが、世界中から買い集めたアートの数々が、そのベースとなっています。
ロダン、モネ、ピサロなど有名作家の作品も多く、目玉はピカソの《泣く女》。1986年に発生した盗難事件でさらに有名になった傑作です。
犯人は、絵の “身代金” として若手芸術家のための芸術賞設立などを要求するも、約2週間後には駅のロッカーから絵は無傷の状態で無事に発見。しかし犯人はいまだ捕まらず、事件は未解決だそう。
そんな逸話を知っていると、鑑賞がいっそう楽しくなります。
古代エジプトから現代オーストラリアまで、作品の幅広さもこの美術館の魅力です。
また、徒歩8分ほどのフェデレーション・スクエアには、アボリジナルアートをはじめ、オーストラリアのアーティストの作品を集めた分館、イアン・ポッター・センター (NGV Australia)も。
オーストラリアで生まれたアートの歴史と多様性をまるごと体感できる貴重な空間。メルボルンを訪れたら必見です。
2022.06.22(水)
文=矢野詔次郎
写真=鈴木七絵
協力=オーストラリア政府観光局