ゴールド・コーストで貴重なアボリジナル体験
カフェやギャラリーでアボリジナルカルチャーにふれたら、その素晴らしさをもっと知りたくなるはず。ゴールド・コーストには貴重な先住民文化を体験できる場所があります。
リゾートライフ編でご紹介したバーレー・ヘッズから歩いて約15分(バスに乗れば約5分)のところにある「ジェルルガル・アボリジナル・カルチャー・センター」は、先住民ガイドさんの案内のもと、この地のアボリジナルカルチャーを学ぶことができます。
〈ジェルルガル・ウォークアバウト〉と題されたツアーは、所要時間約2時間。ゴールド・コーストに最も古くから暮らしてきたユガンベの人々にとって大切な場所であった “夢見る山 ジェルルガル” を散策しながら、伝統的な暮らしや食文化、さらには世界観に至るまで、さまざまなストーリーをガイドさんが解説してくれます。
ガイドさんの話を聞きながら山を巡り、最後はエコー・ビーチへ。
現在は海水浴を楽しむ人々が憩う場所となっていますが、アボリジナルの人々にとってここは、かつて海老や牡蠣、蟹などが獲れる絶好の漁場。さらに、聖なるイルカにまつわる神話も生まれた、大切な場所なのだそう。
ゴールド・コーストの風景に秘められたさまざまな物語を聞くと、その美しさがまたひと味違って見えてきます。
なお、ガイドツアーは英語のみ。開催日はホームページにて確認を(オンラインにて予約可能)。
また、ジェルルガルからバスで約20分、ネイチャー編でご紹介した「カランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリ」にも見逃せない体験があります。それが毎週木~日曜の15時から開催される〈アボリジナルカルチャー・ショー〉」。
アボリジナルの人々が太古から受け継いできた民族音楽と踊りを、間近で鑑賞できる極めて貴重な機会です。
その伝統を披露するのは「ユガンベ・アボリジナルダンス・グループ」。国の公式行事などにも出演する、アボリジナルのトップアーティストです。
かつては文字を持たなかったため、暮らしの教え、コミュニティの掟、そして神話に至るまでを、歌や踊りで先祖から代々受け継いできたアボリジナルの人々。
18世紀にイギリスによる入植がはじまって以降、急激に失われてしまったこの比類ない文化を次世代へと伝えていくことは、アボリジナルとしてのアイデンティティを守り継ぐことでもあるのです。
さらに、精霊と交信する儀式で使用されてきた神聖な楽器、ディジュリドゥの神秘的な音色も印象的。独特のグルーブ感に身をゆだねているうちに、なんとも不思議な気分の高揚を覚えます。
まさに奇跡というほかない、歌と踊りの圧倒的な世界観。15分ほどの体験ですが、心に深く刻み込まれます。
2022.06.21(火)
文=矢野詔次郎
写真=鈴木七絵
協力=オーストラリア政府観光局