●「富山県美術館」(富山県・富山市)

 JR富山駅から歩いて15分ほど。建築家・内藤廣が設計を手がけたガラス張りの外観が美しい「富山県美術館」は、地元の人々の憩いの場・富岩運河環水公園内にあります。公園内から美術館へと続く川沿いの遊歩道が気持ちよく、心をゆるめてくれます。

 2017年にオープンした美術館のコンセプトのひとつが「アートとデザインをつなぐ」。絵画のコレクションは、ピカソ、ミロ、ポロックなど、世界的巨匠の名画がずらり。20世紀初頭から現代までの美術の流れを辿ることができます。

 20世紀のデザイン史を代表する国内外の椅子のコレクションも特徴のひとつ。加えて、約1万4000点のポスターを所蔵し、うち5000点をデジタル化。巨大なタッチパネル上でポスターの画像をタッチすると、作家や制作年など関連するポスターの情報が表示され、楽しくアートとデザインに親しめます。

 そんな富山県美術館のさらなる魅力は、館内のさまざまな場所から富岩運河環水公園の美しい運河や、雄大な立山連峰が望めること。

 2階の屋外広場には、神通川の緑を背景に三沢厚彦のクマの彫刻作品を展示。阿弥陀如来がクマの姿を借りて立山を開山に導いたという、地域に残る伝説をモチーフに制作したそう。かわいらしくも神々しいクマの佇まいに、思わず笑みがこぼれます。

 屋上庭園「オノマトペの屋上」にもぜひ。広々とした芝生の上には、グラフィックデザイナー・佐藤卓がデザインした遊具を設置。長いラッパのようなチューブが絡まり、チューブの向こうの相手と会話ができる「ひそひそ」、休憩や昼寝に使えるハンモック「うとうと」など、個性的な遊具に遊び心が刺激され、まるで童心に返った気分に。青空に包み込まれるような大パノラマも開放感たっぷりで、心と身体がリセットされていくようです。

富山県美術館

所在地 富山県富山市木場町3-20
電話番号 076-431-2711
開館時間 9:30~18:00、屋上庭園8時~22時(入館は閉館の30分前まで)
休館日 水曜(祝日の場合開館)、祝日の翌日、年末年始
観覧料 コレクション展大人 300円、企画展は内容により異なる
https://tad-toyama.jp/

2022.06.01(水)
文=中村美枝(JAM SESSION)