少しだけ旅に気持ちが向くようになってきた今年の夏。せっかくなら、日常を忘れさせ、心を解放してくれるような、アート作品に会いに出かけませんか。

 アートにも造詣が深いライターの中村美枝さんに、屋外の気持ちのよい空間で楽しめる、おすすめのアートスポットを紹介していただきました。

 前篇の今回は、今こそ巡りたい3つの芸術祭を紹介します。


●「越後妻有 大地の芸術祭 2022」

 新潟県・越後妻有地域の里山で繰り広げられる「越後妻有 大地の芸術祭 2022」。2000年から開催されてきた芸術祭は今回で8回目。コロナの影響で1年延期となり、今年の4月29日に開幕を迎えました。

 広大な田畑、古民家、廃校、無人駅……と、6つのエリアのさまざまな場所に、カラフルで巨大なインスタレーション、ロマンや遊び心を感じさせる作品など、バリエーション豊かなアートを展示。すがすがしい空気と緑にあふれる里山をめぐりながら、アートな時間が過ごせます。

 なかでも見逃せないのは、20年以上にわたって越後妻有とかかわってきた、旧ソ連(現ウクライナ)出身のイリヤ&エミリア・カバコフの作品群。

 大地の芸術祭を象徴する「棚田」、2015年制作の「人生のアーチ」などに加え、2021年には新作7点を発表。「手をたずさえる塔」は「あらゆる人種、国籍、文化の人々が互いを受け入れ、手をたずさえることの大切さを、アートを通して伝えたい」と願う、2人の集大成となる作品でもあります。

 コロナ禍というだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻とも重なってしまった今。松代エリアを中心に展開するカバコフ作品をめぐって、平和や世界に思いを馳せたいですね。

 十日町エリアでは、「越後妻有里山現代美術館[キナーレ]」が2021年にリニューアル。「越後妻有里山現代美術館 MonET」と名称を改め、常設作品を入れ替えました。名和晃平、中谷ミチコ、目、森山大道、イリヤ&エミリア・カバコフらの新作が展示されています。

 屋外作品のレアンドロ・エルリッヒ「Palimpsest:空の池」も必見。美術館の回廊に囲まれた池はまるで鏡のよう。刻々と表情を変える空や建物が水面に映し出され、訪れるたびに異なる印象を与えてくれます。

 十日町エリアでは、1924年築の茅葺き民家を“やきもの”で再生した作品兼レストラン「うぶすなの家」にも立ち寄って。集落のお母さんたちのおもてなしと手料理でほっとひと息つくのも、この芸術祭の楽しみ方です。

 日本三大渓谷のひとつに数えられる清津峡の「清津峡渓谷トンネル」を作品にしたマ・ヤンソン/MADアーキテクツ「Tunnel of Light」。全長750メートルのトンネル内は楽しい仕掛けがたくさん。終点には半鏡面仕上げのトンネル内部と水面に峡谷の自然が映し出され、まさに大自然に包まれているような感覚に。

 「越後妻有 大地の芸術祭 2022」は11月13日までの開催。夏休み期間に入るまでの時期は比較的人出が少なめ。事前予約なしで利用できる施設も多いので、のんびり気分で楽しむなら、今がチャンスです。

越後妻有 大地の芸術祭 2022

会場:新潟県越後妻有地域(十日町市、津南町)
問い合わせ先: 025-761-7767
会期:~11月13日※火・水定休
開催時間:10:00~17:00 10~11月 10:00~16:00※一部例外の作品・施設あり
観覧料:作品鑑賞パスポート大人 4,500円 7月29日までは早期割3,500円※一部の作品・施設は別途料金
https://www.echigo-tsumari.jp/

2022.05.28(土)
文=中村美枝(JAM SESSION)