幾多の困難を超えて美術品を守り、財を投じた先人たちの篤い想いは各地の美術館に作品とともに引き継がれ、今日も新しい物語を紡ぎ続ける。

 各地の想いを引き継ぐ美術館を7館紹介。


◆セゾン現代美術館|Sezon Museum of Modern Art

 1970~'90年代、池袋を中心に「セゾン文化」と呼ばれる一大カルチャーを牽引した堤清二。

 彼が日本に紹介した現代美術の数々は、今、軽井沢の森の中で輝きを放っている。

今を生きる人間の挑戦を現代美術を通して発信

緑豊かな回遊式庭園。

 門を一歩入ると、緑の中に広がっているのは、野外彫刻が点在する回遊式庭園。

 彫刻家若林奮の構想によるこの庭園を巡り、ひとつまたひとつと作品を発見した先に見えてくるのが、セゾングループを率いた堤清二が1981年に設立したセゾン現代美術館だ。

リキテンスタイン、ジョージ・シーガル、ウォーホルなど、アメリカ現代美術も充実。

 堤と現代美術の歴史は1961年に西武百貨店池袋店で開催された「パウル・クレー」展から始まる。堤はその後、西武美術館(後のセゾン美術館)などで数々の現代美術展を開催し、今を生きる人間の挑戦を現代美術を通して発信していく。

【ワシリー・カンディンスキー《軟らかな中に硬く》1927年】1980年代にコレクションに加わったカンディンスキーの名作。直線、円、三角形など幾何学的な形態のみで画面を緻密に構成。

 同時に、ジャスパー・ジョーンズ、ワシリー・カンディンスキー、中西夏之、横尾忠則など国内外の作家の作品を収集し、約800点に及ぶコレクションを築き上げた。

【ワシリー・カンディンスキー《分割―統一》1934年】カンディンスキーがドイツからフランスに移住し、幾何学的な形態から離れて有機的なモチーフや色彩を用い始めた頃の作品。

「堤は美術館の在り方を自然にたとえ、『砂丘を覆う砂や、極地の荒野の上に拡がる雲海のように、たえまなく変化し、(中略)足跡を打消してゆく新しい歩行者によって、再び新しい足跡が印されるような場所であって欲しい』と記しています。

 この文章の美しさや多様性を受け入れる姿勢に、彼の人間らしい眼差しが見えてくるように感じます」(学芸員・坂本里英子さん)

【パウル・クレー《北極の露》1920年】1961年に西武百貨店池袋店で開催した日本初のパウル・クレーの大規模展覧会が、堤と現代美術を深く結びつけることとなった。

 堤が美術館の理想としたのは、伝統的な価値の保護者としての姿ではなく、実験的創造の場となる「生きた美術館」だったという。

【パウル・クレー《セイレーンの卵》1939年】クレーの晩年、手が不自由になったころの作品。1980年の「生誕100年記念 パウル・クレー」展(西武美術館)にも出品された。

 挑戦を続けた彼が愛した現代美術作品の数々は、今、軽井沢の豊かな自然の中で、褪せることのない輝きを放ち続けている。

セゾン現代美術館

所在地 長野県北佐久郡軽井沢町長倉芹ケ沢2140
電話番号 0267-46-2020
開館時間 4月~10月 10:00~18:00、11月 10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
料金 1,500円
休館日 木曜(祝日は開館)、展示替え期間、冬季(11月末~4月中旬頃)
https://www.smma.or.jp/
※2020年11月23日(月・祝)まで「都市は自然」展開催
※通常8月は無休。入場制限等を行う場合があり。最新情報はHPで

Feature

個性的なコレクションを収蔵
日本全国の、物語を紡ぐ美術館

Text=Yuko Harigae(Giraffe)
Photographs=Ken Sato(museum)
Cooperation=Sezon Museum of Modern Art

この記事の掲載号

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