幾多の困難を超えて美術品を守り、財を投じた先人たちの篤い想いは各地の美術館に作品とともに引き継がれ、今日も新しい物語を紡ぎ続ける。
各地の想いを引き継ぐ美術館を7館紹介。
◆山梨県立美術館|Yamanashi Prefectural Museum of Art
自然の恵み豊かな土地と、そこで働く人々に優しい視線を注いだ作品のコレクション。
地域と美術館をつなぐミレーコレクション
1972年、置県百年記念事業として建設が決定された山梨県立美術館。コレクションの方向性について専門家から提言されたのは、ミレーに代表されるバルビゾン派の作品の収集だった。
「農業のさかんな山梨の風土が、バルビゾン派と合っているという意見でした。
この時点ではミレーの絵を収蔵できる見込みはありませんでしたが、1977年にミレーの《種をまく人》《夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い》などを購入でき、コレクションがスタート。
現在では70点ものミレー作品を収蔵しています」(学芸員・太田智子さん)
ミレーが移り住んだバルビゾン村は、パリ近郊の自然溢れる農村。大都市の喧噪から少し足を延ばせば、自然に囲まれた恵み豊かな土地が広がっているという構図が山梨とも似ている。
ミレーはそんな土地で農業に従事する人々へ眼差しを注いだと太田さん。
「当館でミレーの絵を鑑賞し、描かれている働く人は自分や家族の姿だと感じた方もおられます。
美術館が地域のものとして存在する上でも、こうしたつながりは大切だと思われます」(太田さん)
ミレーを核としながら、ヨーロッパの風景画や日本の近現代美術、県ゆかりの作家の作品も収集してきた山梨県立美術館。
既存のコレクションのための美術館ではなく、ここでは、コレクションのひとつひとつが、美術館という物語のページを綴っている。
山梨県立美術館
所在地 山梨県甲府市貢川1-4-27
電話番号 055-228-3322
開館時間 9:00~17:00(入館は16時30分まで)、レストラン 9:30~17:00(食事は11:00~17:00[16:30 L.O.])
料金 520円(コレクション展)
休館日 月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(日曜の場合は開館)、年末年始
https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/
※臨時開館・休館あり。感染症予防対策をしています、詳しくはHPへ
Feature
個性的なコレクションを収蔵
日本全国の、物語を紡ぐ美術館
Text=Yuko Harigae(Giraffe)
Cooperation=Yamanashi Prefectural Museum of Art