“仁左・玉”コンビが歌舞伎座で演じるのは12年ぶり

 上演回数の多いこの人気作で今回、伊織とるんを演じているのは片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さん。もう半世紀以上も数々の舞台で共演し続け、名コンビとして名高いおふたりです。

 歌舞伎がなぜ同じ演目を繰り返し上演するかといえば、演じる俳優さんによって作品や役に対する解釈が微妙に異なりそこに演じ手の個性が加わって、作品の味わいは多彩なものとなるからです。時代の空気や受け手のコンディションによっても、また同じ俳優さんであったとしても、人生経験や積み重ねたキャリアの蓄積などによって移ろいでゆきます。

 仁左衛門さんは何度も演じているこの役に、また改めて役に向き合ったところ新たな解釈が生まれたため、再会の場面で、あるせりふを加えたそうです。詳細は筋書(公演プログラム)のインタビューに記されていますのでここでは控えますが、そのせりふがあることで京都へ経つ前日のことが伏線として生き、夫婦の関係性がさらに立体的に感じられるようになりました。

 人と人が顔を合わせ舞台上で対話をすることで紡がれる物語は、このようにしてアップデートされているのです。登場人物と同じ時空間を共有しその思いをリアルタイムで受容することによって生まれる感動、それはやはり劇場に足を運んでこそのものです。

 2022年4月歌舞伎座における『ぢいさんばあさん』が、今のご自身にどう響くのか、そしてまたいつかこの作品で出会った時にそれがどう変化するのか、ご興味がおありでしたらぜひ確かめてみてください。

●『ぢいさんばあさん』が観られるのはこちら
四月大歌舞伎

期間 2022年4月2日(土)~27日(水)
第一部 午前11時~
第二部 午後2時40分~
第三部 午後6時20分~
※休演 11日(月)、19日(火)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/750