狂気のシリアルキラーvs元刑事の疾走感に満ちたサスペンス
『チェイサー』
主人公は、今は風俗店の経営をしている冴えない元刑事なんですが、どんどん自分の店の女の子たちが失踪していくから、おかしいと思っていて。女の子たちがもっていた電話番号を覚えていて、それをたどっていったら、ちょうど目の前で犯人が捕まるんです。そして自分が元いた部署が、犯人を連行していって。でも、当時の法律では、24時間以内に証拠が見つからないと拘束しておけないんです。
当時のそんな法律を皮肉ってもいますが、犯人は“何人殺した”とか“実はもっと殺している”とかコロコロと証言を変えていって、一つも証拠が見つからないから、釈放しなければならなくなってしまうんです。それからどうなるのか、というサスペンスが、もう、メチャクチャ面白い。連続殺人犯を、僕が大好きなハ・ジョンウが演じていて、すごく気持ち悪いんです。こういう重い話を、圧倒的なエンタメに昇華するのも、韓国映画のスゴイところの一つですね。
●あらすじ●
元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)が経営するデリヘルから、女たちが次々に失踪する。同じころ、街では連続猟奇殺人事件が発生していた。ジュンホは女たちが残した携帯番号から、客の一人、ヨンミン(ハ・ジョンウ)という男にたどり着く。ヨンミンはあっけなく逮捕されるが、証拠不十分であっさり釈放されてしまう――。2004年に実際に起きた、連続殺人事件がベースになっている。
『チェイサー』
監督:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク 、 ハ・ジョンウ 、 ソ・ヨンヒほか
2008年/韓国/125分
© 2008 BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS. All Rights Reserved.
U-NEXTほかにて好評配信中。
生き残りをかけたトンネル内の奮闘と、外で奔走する救出劇
『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』
これまたハ・ジョンウ主演作ですが、彼の地力のスゴさが分かる、メチャクチャ面白い作品です。主人公の車が、崩落したトンネルに、いきなりバ~ッと埋まってしまって。何とか生き残るのですが、電話の充電も切れちゃう。奥さんは必死で政府に掛け合うけれど、予算がないから諦めますとか言われてしまって。そんな時、この主人公はボロッボロになりながらも、諦めないんです。
ちょうど娘の誕生日のために買っていたケーキがあったと少しずつ食べて、またガソリンスタンドでもらった水が2本、その時は「いらねーよ」と言って放り投げていたのがあったことに気付いて、少しずつ飲みながら、生き抜いていく。車は潰れているけれど、ギリギリ少しだけ動ける状態で、石を少しずつどかしていって。後部座席には移れないけれど、後ろの席のものは頑張れば取れる、みたいな。首が痛くなってしまったり、色んな主人公の焦りを、目線で見せていくんです。
崩れたトンネルの中、潰れかけた車の中の1シチュエーションという、色んな制限がある中で、ここまでハラハラさせられるなんて、もう天才だなって思っちゃうくらい。そして終わり方が、とにかく気持ちがいい。本当にスッキリできますよ。当時の韓国で多かった突貫工事や、政府の政策がバンバン変わって国民たちが翻弄されている状況も描かれている。そういう視点も含めて、すごく面白いのでおすすめです。
●あらすじ●
大きな契約を取り付けた自動車ディーラーのジョンス(ハ・ジョンウ)は、妻(ペ・ドゥナ)と娘が待つ家へ、意気揚々と車を走らせていた。ところが通りかかったトンネルが突然、崩落し、生き埋めになってしまう。辛うじて一命を取り留めるが、あまりの崩落の激しさに救助作業が難航し……。
『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』
監督:キム・ソンフン
出演:ハ・ジョンウ、ぺ・ドゥナ、オ・ダルスほか
2016年/韓国/127分
© 2016 SHOWBOX, ANOTHER SUNDAY, HISTORY E&M AND B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.
DVD発売中 3,800円(税抜)
発売元:ニューセレクト株式会社
販売元:アルバトロス
2022.01.22(土)
文=折田千鶴子
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=徳永貴士(SOT)
ヘアメイク=SHUTARO(vitamins)