自分の目で見て、心震わせたものに使命感をもって取り組んでいます

――今回の防災セットのみならず、今後も「Think The DAY」としてさまざまな形での活動や提案をされていくご予定ですか?

 そうですね、もう都度都度。もともとは被災地支援に特化した団体を作ろうと思っていたんですけど、コロナ禍もあって医療従事者に向けての支援も必要ですし、個人としては養護施設の支援も長年やっていますし、何しろ問題は山積みですから。

 一つひとつ、目の前に起きたことで自分が向き合えるもの、自分の目が届く範囲のことに取り組みながら、その範囲を広げていきたいなと思っています。

 今回の防災セットは一般向けのものですが、企業さん向けのものも提案を始めています。それに、ただ備蓄しているだけだと、いざという時にうまく使えない場合もありますので、キャンプなどで防災用品を試しに使ってみる機会を設けることができれば、と思っています。まだアイデアレベルですけどね。

――それだけのアイデアが湧いてきて、しかも実行に移せるという紗栄子さんのパワーには目をみはるものがありますが、いったいどこに源泉があるのでしょうか。

 自分自身で動いているからじゃないでしょうか。自分の目で見て、心を震わせて、思いを持って動いているから。

 やっぱり、現場で見ているか、会議室にいるかで全然違うと思うんですよ、ドラマじゃないけど(笑)。現場に行くと、避難所で何が必要なのかとか、被災した方がどういうことで困っているかとか、現実を学ぶことができる。

 だから支援のアイデアが出てくるし、いろいろな異業種の方たちとのコミュニケーションを通じて具現化することができるんだと思います。

自分のための行動が誰かの幸せにつながる。そういう循環を生み出していきたい

――紗栄子さんの活動には、被災地の皆さんから多種多彩な企業まで、多くの方たちが賛同しています。

 私の背中を押してくれているのは、そういった賛同者の皆さんですね。2019年の台風第15号及び第19号で千葉が甚大な被害にあった時も、SNSで支援物資を募ったところ、2日間で4トントラック15台分も集まり、すぐに現地へ運送できました。

 みんなの力によって助かっている人たちが、目の前にこんなにいる。そのことを、支援してくれた方たちに正しくフィードバックできれば、さらに多くの人が手を貸してくれるんです。

 そうやって支援の輪が広がっていくことを、この1年で強く実感しているので、自分が組織化してプラットフォームを育てていくことが、これまで私を支えてきてくださった方たちへのひとつの恩返しの方法だと思っています。

――反面、時には心無いバッシングを受けることもあるのではないですか?

 最近ではあまり誹謗中傷も耳にしなくなりましたが、自分でもスルースキルが身についてきたと思います。大切な言葉と、そうじゃない言葉の区別が、自分の中でちゃんとつくようになりましたから。良くも悪くも個人の意見が簡単に発信できる時代だから、このスキルは身につけていくべきだと思います。

 あとは、情報に対して鵜呑みにしないということも、すごく大切ですよね。誹謗中傷なんかないに越したことはないですけど、そういう情報を追いかけることにエネルギーを使うのではなく、みんながもっとハッピーでピースなことにエネルギーを使う世の中になっていってほしいなと思う。

 なぜなら、情報社会ってオセロみたいなもので、悪だと言われていたものも、いったん良いとなれば、パタパタッと流れが変わってしまうから。

 だからこそ、こうしてメディアに携わらせていただいている私たちの役割としても、そういう新しい社会の空気を作っていくべきだと思っています。大きくは変えられなくても、個人の力が大きくなれば社会は変わっていくし、空気は作れるじゃないですか。そこにちゃんと力を注いでいきたい。

――今回のこの防災セットには、そういう紗栄子さんの生き方や、今までの10年以上の経験などが、すべて形になっているように感じます。

 そうですね。このセットが他と一番違うのは、利益の全額が支援活動につながるということ。皆さんがこれを選んでくださって、災害のその日からちゃんと生き抜く力を身につけてくださるなら、それは自分にとっても人にとっても役立つ支援のかたちになる。

 その上で、皆さんが寄付して下さったお金を資金として、何かあった時の支援物資や炊き出しに使わせていただくという、持続可能な循環が生まれればと考えています。

 自分のための行動が、本当に誰かの幸せにつながる。そういう流れのひとつを、この防災セットを通じて作っていきたいですね。

紗栄子(さえこ)

1986年に宮崎県で生まれる。二児の母。14歳で芸能界デビューし、タレントや女優、モデルとして活躍。10代の頃から商品開発に携わり、ファッションやコスメを中心にさまざまなブランドプロデュースを手掛ける。2010年より支援活動を始め、2019年10月に一般社団法人Think The DAYを設立、代表理事を務める。2020年8月より拠点を栃木県に移し、「NASU FARM VILLAGE」の運営に参画。
http://thinktheday.org/

2021.04.27(火)
構成=張替裕子(giraffe)
撮影=平松市聖
ヘアメイク=石川ユウキ
スタイリング=田中美穂子