生活も仕事もスタイルの激変を求められ、誰もが時代の変化を体感した2020年。西洋占星術においても、これまで200年続いた「地の時代」が終わり、2021年からは「風の時代」が始まるとされています。

 「地の時代」は、目に見えるものや形あるものを重視し、所有することや定着することが求められた時代。対して「風の時代」は、情報や知識、コミュニケーションなど形のないものが重視され、「知る」ことを求め、柔軟な思考や行動が必要とされる時代だといいます。

 世の中の価値観の大きく変換するこの時代を、まさに風のように伸びやかに、そしてしなやかに生きている一人の女性。それが、紗栄子さんです。モデル・タレント、社会支援活動、栃木での牧場経営、そして子育てなど、さまざまなタスクをこなす彼女の原動力とは。

» 前編『幸せに生きることも大切な支援活動 紗栄子さんプロデュースの防災セット』


誰より自分を理解しているから思ったことを実行できる

――昨年の夏から栃木県大田原市の『NASU FARM VILLAGE』の運営という新しい仕事を始められましたね。公式YouTube「Sae Channel」では、馬たちやスタッフさんたちとの様子が公開されています。

 動画配信企画で酔っ払っていたり、スタッフからディスられたり、「こんな紗栄子、見たことない」なんて言われることもあるんですけど、あれが素なんです(笑)。

――どの動画もすごく楽しそうですよね。牧場での生活を満喫されているように感じます。

 牧場では毎朝6時には起きて、7時から働いています。お馬さんの世話をして、スタッフとミーティングして、夏だったらブルーベリーを収穫したりしなきゃいけないし、お客さんが来る前にしなきゃいけないことがたくさんあるんですよ。

 でも、ホースセラピーというだけあって、何しろお馬さんがかわいいから、忙しくはあるけどすごく癒やされるんですよ。馬にはイルカと同じだけの癒やし効果があるそうなので、そういう意味で今の不安な時代にすごく大切だな、本当にこれはギフトだなぁって思います。

 牧場の芝も、長年勤務しているおじいちゃんスタッフが大切に管理してくれていて、それはそれはきれいなんですよ。みんなに裸足でアーシングしてもらいたいくらい。

――どういうきっかけで牧場を運営することになったんですか?

 それがね、急なんですよ。去年の1月頃は、まさかわたしが栃木の牧場にいるなんて1ミリたりともよぎっていませんでしたけど(笑)。5月の末だったかな、それまでの運営会社がこの牧場を手放すという話が、友人のところに入ってきて。なんとか維持したいということで、ボランティアなどで農業経験のある私に相談が来たんです。

 それで、実際に現地に行って話を聞いてみたんですが、とにかくすばらしい場所でした。馬たちも愛らしくて、すごく魅了されてしまいました。ただ、いろいろと問題も山積みで、友人の会社がその牧場を購入したものの、実際に運営することが難しい状況だったんです。もし運営ができないとなると、スタッフさんたちの雇用も、目の前にいる19頭の馬たちの行く末も危ぶまれてしまう。

 ここで何か私にできることはないかという思いと、馬の命と人の生活がかかっていることに未経験の自分が簡単に手を挙げてはいけないという迷いとがあり、すごく悩んでいたところ、牧場のスタッフの皆さんが「もし本当に紗栄子さんがやってくれるなら、自分たちはもっと頑張れる。だからやってほしい」と言ってくれたんです。

――背中を押される言葉ですね。

 はい、その言葉に勇気をもらって、明日にはどうなるかわからない状況を放ってはおけないと思いました。それに、頑張らないままで諦めたら、19頭のお馬さんたちを守れなかったことがずーっと私の人生に残り、後悔し続ける。

 だったらまず頑張ろう、できないことはないって思ったんです。でもやっぱり何も分からないから、とにかく現地に移住して、みんなと同じ生活をするしかなかった。もう草むしりから始めて、ときにはトラクターを運転してみたりして、無我夢中でした。

――被災地の支援活動もそうですが、紗栄子さんは何事でも実際に動き、体験することから始めているように見えます。

 自分で体験しないと何も分からないんですよ。自分でやってみて、問題や答えを見つけないかぎり、自信にもつながらないし、確約も得られない。自分が動いて自分で見たものでしか、物事を判断したくないんです。

 それと、やるべきことに対して、自分でそれを続けられるための信念があるから行動できるんだと思います。物事を投げ出さない責任感とか継続力といった部分を、自分の好きなところとしてちゃんと認めてあげているし、自分のことを誰よりも自分が理解し、信じているから、思いを実行に移せるんです。

受けた幸せは自分だけに留めずしっかり回していく

――観光牧場としての運営のほか、馬の保護活動もスタートさせました。

 そうですね、観光牧場としては、お客さまにトレッキングを楽しんでいただいたり、お馬さんと触れ合っていただいたり、レストランやカフェで寛いでいただいたり。でも、私が何より目指しているのは、保護馬たちのシェルター機能というか、殺処分になってしまう馬たちのセカンドライフを築くことなんです。

 日本で生産される競争馬は年間で7,000頭ほどですが、生涯を全うできる競争馬はその1割ほどしかいないといわれています。引退した競走馬も、決してのんびり余生を送れるわけではない。何らかの理由で殺処分となる馬たちを私たちの牧場で引き取って、穏やかで幸せな余生を送れる場所を作りたいと願っているんです。

 もちろん、私一人の力でできることではないので、クラウドファンディングで支援を募ったところ、本当にたくさんの方たちが賛同してくださって。その支援金を牧場の修繕費や運営費に充てさせていただいています。

――スタッフの方たちもそうですし、クラファンの支援者もそうですが、やはり紗栄子さん自身のポジティブなパワーが人を惹きつけるんでしょうね。

 出会いには恵まれていますね。去年は社会的にも大変な1年でしたが、私はそんな中で良い出会いを得て、アイデアを形にしていけたこともありましたし、不自由な中でできることをしっかり自分たちで探せたことも、チームとしての自信につながりました。

 やっぱり、受けた幸せは自分だけに留めておくのではなく、しっかり循環させていくことが大事なんですよ。それは私たちみんながチームで感じていることですし、そう思って動いている仲間と仕事ができている今が、本当に幸せですね。それが私の一番の強みかもしれない。

2021.04.27(火)
構成=張替裕子(giraffe)
撮影=平松市聖
ヘアメイク=石川ユウキ
スタイリング=田中美穂子