2011年に東日本を襲った大震災から10年。改めて、しっかりとした防災意識と「その日」への備えが必要とされています。

 そんな中、4月24日に発売となったのが「Think The DAYオリジナル防災セット」。企画・販売を手がけるのは、モデル・タレントとしての仕事と並行し、積極的に社会支援活動を続けている紗栄子さんが代表理事を務める一般社団法人Think The DAYです。

 常に新たな挑戦を重ね、ヴィヴィッドに輝き続ける紗栄子さんが、今、支援活動に力を注ぐのはなぜか。その想いをお聞きします。

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災害が発生したその日から支援に動き出せる組織を設立

――紗栄子さんが「Think The DAY」を立ち上げたのはどういう意図からですか?

 「Think The DAY」は、主に被災地支援活動などを行うために設立した完全非営利の一般社団法人です。

 私は芸能活動をしながら、ライフワークとして10年以上前から被災地支援などのボランティアを行ってきました。でも、天災など人命がかかっているような事態が発生する時はいつも突発的で、“その時”自分がどう行動するべきか、芸能活動とボランティア活動のバランスの取り方にはいつも頭を悩ませていました。

 私は「自分に何か出来ることはないか!」という想いを優先してしまうんですね。でもそれによって芸能のお仕事に迷惑をかけてしまうこともある。そんなことを繰り返している中で、いっそのこと自分で自分の動き方を選択できる環境をつくってしまおうと、在籍していた事務所との業務提携を解消し、2019年10月に「Think The DAY」を立ち上げました。

――「The DAY」とは“その日”、つまり災害当日ということでしょうか。

 はい。「Think The DAY」は、災害が発生した“その日”から動き出せるよう、「予防支援」に力を入れています。賛同者からの寄付をプールしておき、それを活用して災害が起きる前に支援物資を購入し、災害発生に備えることで、有事の際の迅速な支援活動を目指しています。

 ただ、立ち上げのタイミングがちょうどコロナ禍が深刻化した時期だったので、まずは目の前で起きていることに立ち向かおうと考え、チャリティーTシャツを制作して販売し、その利益で医療従事者の方々に医療用防護マスクや防護服をお送りしました。

 ありがたいことに1億2千万円ほどの売り上げがあったんですよ。

――それはすごい金額ですね!

 それだけたくさんの方が、医療従事者のために何かしたいと思っていらしたということですよね。日本はドネーションに対して意識が遅れているとか、希薄な国だとか思われがちですけど、そんなことはないのだと実感しました。

 ただ、やっぱり「言わないことが美徳」というお国柄もあるし、一方ではあまりに情報が溢れていて何をしたらいいか分からないという状態もある。そんな中で私たちが、「Think The DAY」というかたちで選択肢のひとつを提案できたらな、と思っています。

自分のご機嫌をとってあげるのも被災時には大切なことなんです

――今回の防災セットは、紗栄子さんがご自分の経験を生かしてセレクトされたそうですね。

 はい、そうなんです。被災者の方たちは避難所などでとても心細い思いをされています。そんな時に少しでも心が安らぐ食事や少しでも安心できるような生活アイテムを、一つひとつ選びました。

 食事でいうと私が海外に行く時にいつも持っていくアルファ米のご飯とか、吉野家さんの牛丼が缶詰になった「缶飯」とか。「缶飯」、本当においしいんですよ!

 「PANCAN」は、私が牧場を経営している栃木の製パン会社さんの製品で、ぜひ入れたい、と口説き落として数を揃えてもらいました。どれも、非常時じゃなくてもおいしくいただけるものを選んでいます。

――携帯しやすいアルコール入りカード型除菌スプレーなど、除菌対策に気配りされているのも、この時代らしいラインアップですね。

 感染リスクも大きな不安要素のひとつになりますからね。

 心を落ち着かせるという点でいうと、リラックス効果の高いロールオンタイプのオリジナルCBDオイルも同梱しました。避難時は運動不足から足のむくみに悩む人も多く、私もボランティアの時にはアロマオイルを持参してマッサージをさせていただいているんです。

 香りとCBD成分の効果で疲労回復や血行改善なども期待できますので、ぜひ使って、ご自分のご機嫌をとってあげてほしいです。

――「自分のご機嫌をとる」。被災者の状況をよく知る紗栄子さんならではの言葉のように感じます。

 支援活動の源って、実は「自分が自分でちゃんとしっかり生きていくこと」だと思うんです。自分が自分の力でそれなりにハッピーに過ごせていたら、そんなに人に迷惑をかけることも助けを借りることもなくいられるでしょう?

 気持ちの余裕が持ててはじめて、隣に誰か困っている人がいる時、手を差し伸べることができる。幸せに生きるということは、それだけですごくベーシックでスタンダードな社会支援なんじゃないかなって。

幸せに生きること、それ自体が社会支援につながる

――こうした防災セットを準備しておけば、気持ちも落ち着きますし、1〜2日は支援物資に頼らずにいられますね。

 リュックにはあえてぎっしり詰め込んでいないんです。空いたスペースには、その人自身にとっての生活必需品やいつも使っているもの、女性だったら生理用品などを入れておくと安心ですよね。

 不測の事態が起きた時、どれだけ自分がその時までに準備できていたかが、安心材料や自信につながります。災害時は特に冷静さを失うタイミング、パニックを起こしていると何が本当に必要なのか正しい判断ができないんですよ。

 その意味でも、東日本大震災から10年という今このタイミングで災害予防を考えることが、本当に何かあった時の正しい対応の一歩になると思っています。

2021.04.27(火)
構成=張替裕子(giraffe)
撮影=平松市聖
ヘアメイク=石川ユウキ
スタイリング=田中美穂子