美容するほどに、生きる意欲が湧いてくる。
美容はまさに生きる糧
“メイクセラピー”というジャンルがある。言うまでもなく、メイクの力で心を前向きにする療法。美容にそういう力があること、医療現場でも実際に行われていること、きっと誰もが知っている。
でも自分にとっての美容にも、そういう不思議な力が宿っていることに気づいている人はむしろ少ないのだ。と言うより、当たり前になった美容は、歯磨きや服を着ることと変わらないルーティンワークに思えてしまうが、実は知らないところでちゃんと力を発揮している。つまり美容できているうちは大丈夫、美容はやっぱり服を着ることとは違う。
それなりのエネルギーを要するとともに、人間何パーセントかでも前向きな心がないと、まず鏡と向き合えない。自分の顔をまっすぐ間近に見ること自体、自己肯定感がないと相当にキツイからである。さらに言うなら美容は、無意識にでも今日だけでなく明日のため、未来のためにする行為だからである。
問題は、美容が面倒くさくなってきた時。美容するエネルギーは、生きていくためのエネルギーといつもどこかで“同期”しているからだ。だからこそ、だんだん美容が面倒になっているのに気づいた時ほど、あえて美容してほしい。
もちろん誰だって、美容が面倒になる日があるもの。ただそれを続けていると、自分への興味が減っていく。だからいっそ無理矢理メイクして、キレイな自分を自分に見せる。そこでハッとして心を動かして。メイクはそのためにあると言えるほど。
生きていく意欲を生むのは、ほんの些細な事だったりするわけで、スキンケアならシートマスクを。メイクならファンデと口紅。アイブロウやネイルも効果的。どれか1つでいい、ひと技でも、その場で生命力のスイッチをオンにしてくれる。まさに美容は生きる力なのだ。
2021.04.11(日)
文=齋藤 薫