聴く人を選ばない「アメリカン・フィーリング」

 サーカスのヒット曲といえば「Mr.サマータイム」と「アメリカン・フィーリング」が圧倒的に有名。まずは空気清浄の意味を込めて「アメリカン・フィーリング」を先に聴くのがオススメだ。この曲を流せば自動的に煌めく風が吹く。

 例えば私が発起人となり、洋楽やヒップホップ、演歌といったあらゆる音楽のジャンルに精通した、しかも10代から90代という広い層を集めてイベントをしたとする(いやなイベントだなあ……)。

 イベント開幕までの待ち時間、会場の空気を温めるため、どんな音楽を流しておくか? 私は静かに微笑み、この曲を選ぶだろう。

 全世代が心地良く聴ける声。どんなこだわりピープルも納得するクオリティ。「オレ中途半端な音楽とか許せないんで」と鼻息を荒くする音楽小僧も笑顔になる心地よい音の重なり。

 「アメリカン・フィーリング」を流せば、どんな価値観の違う人間とでも笑顔でレッツパーティーくらいできる気がする! 私の中でサーカスの歌声は、そのくらい信頼度が高い。

聴くだけでイイ女になる「アムールなサーカス」

 サーカスの楽曲は空気を美しくするパワーも素晴らしいが、「爽やか」だけにあらず。男性2人、女性2人という構成を活かした、甘くしっとりとした恋愛ソングも素晴らしい。つまり加湿機能付なのである。

 私は人生半世紀、恋など片手で余るほどしかしていない。そのせいなのか、時折「恋なんてペッ愛なんてケッ」と心がカッサカサに乾き切る。

 そんなときサーカスの「Mr.サマータイム」「愛で殺したい」「アムール」などを聴き、恋多きイイ女の人生を疑似体験する。すると、艶やかな香りのする湿気で心が潤うのだ。

 いくつもの国でいくつもの恋をし、時には恋のライバルを蹴落とし、浮気もして甘い罪悪感を抱き………(妄想)。ああ、なぜか英語やフランス語をマスターした気分にまでなれる!

 CDを聴き終え、我に返った瞬間の虚しさは筆舌に尽くしがたいものがあるが、それでも定期的に浸る。だって陶酔感がすごいから!

2021.04.02(金)
文=田中 稲