コーラスという「調和の美」に浸る

 サーカスは3回メンバーが変わっていて、現メンバーは叶高さん、叶正子さん、叶ありささん、吉村勇一さん。名字を見てお分かりの通り、4人中3人が親族である。正子さんが長女、高さんがその弟、ありささんが高さんの娘。吉村さんだけがオーディションにより加入した「赤の他人枠」なのだそうだ。

 過去のメンバーは叶央介さん、卯月節子さん、原順子さん。卯月節子さんは叶兄弟の従姉妹。央介さんは正子さんと高さんの弟、原順子さんは加入してから央介さんと結婚し……。広がる親族の輪! 「常に4人中3人は親族」というメンバー構成は、メリットとデメリット両方あったと思うが、今でもサーカスは7人とも美しい歌声でつながっている。

 YouTubeチャンネル「サウンド・サーカス」では、歴代メンバー7人全員による歌唱動画「アメリカン・フィーリング」と「Mr・サマータイム」がアップされている。今、なんだかモヤモヤ気分の人はぜひ見てほしい。再生を押せば、歌の神様が作った最高品質の7層フィルター付き空気清浄機能がスイッチオン。そんな感覚になるほど、一気にモヤモヤが吹き飛ぶ! 私も確定申告とコロナのニュースに嫌気がさし、何度この動画に逃げたことか。

「うぁー気持ちいい、嫌な気分が飛んでいく~」

 と再生ボタンをガスガス押し続け、ついには自分もメンバー入りし、ヘッドホンを着けて一緒に歌って動画に収まっている夢まで見た。

 1人1人が自分のパートをしっかりと抑え、厚みを持たせていくコーラスの静かな力が、優しく心に迫りくる。激しい常識破りのパフォーマンスの爽快感とはまた違った「調和の美」に、きっちきちに入っていた顔の力が抜けていく。

 励ますでもなく、奮い立たせるでもなく。ただただ、ひたすらやさしい風と心地よい湿度。

 ああ、今私は、コバルトの風!

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2021.04.02(金)
文=田中 稲