30歳を過ぎて“下の世代”に目が向くように

――近年は新春浅草歌舞伎でリーダー的な存在として活躍されたり、オーディション番組にMCとして出演されたりしていますが、ご自身よりも若い世代への視野が広がっているのでしょうか?

 歌舞伎の世界では僕はまだまだ若手ですので、まだまだ先輩方から育てていただいているという立場です。とはいえ、30歳を過ぎてから大役を勤めさせていただいた際に、先輩方から教えていただいたことを僕自身が下の世代にどういう風に伝えたら良いのかという感覚も少しずつ芽生えてきています。

 教えていただくということは自分のためなのですが、それと同時に後輩に伝えるためにも吸収しなければなりません。特に自分が失敗を経験して培ったことは伝えたいと思いました。

 先輩方からの教えは、教えていただいた時点で習得できることもあるのですが、実際にお役を経験してから理解できることもあります。そういう意味でも後になって先輩方がおっしゃっていたことが身に染みてわかるようにもなりました。

 僕が教える機会はまだまだ少ないのですが、後輩に教えたり聞かれたりすることで自分がより深く理解することができるのだと思います。

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尾上松也(おのえ・まつや)

1985年生まれ。東京都出身。90年歌舞伎座で父・6代目尾上松助の襲名披露に併せて『伽羅先代萩』の鶴千代役で2代目尾上松也を名乗り、初舞台。2009年から歌舞伎自主公演『挑む』を主宰。近年は花形のリーダー的な存在として頭角を現し、浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」で『仮名手本忠臣蔵』五・六段目の早野勘平をはじめ、歌舞伎座でも『御所五郎蔵』の五郎蔵などの大役を勤めている。歌舞伎以外にもミュージカル『エリザベート』のルキーニ役の力強い歌声で魅了するなど、舞台や映像で活躍の場を広げている。

映画『すくってごらん』

エリート銀行員・香芝誠(尾上松也)は、些細な出来事で左遷され片田舎の町へ。そこで偶然、金魚すくいの店を営む美女・吉乃(百田夏菜子)と出会い一目ぼれ。何とか近づこうとするが、秘密を抱える吉乃の心は閉ざされたまま。果たして、香芝は金魚のように彼女の心もすくうことはできるのか――?
歌と笑いと魅惑の世界がココロをすくう!! 新感覚ポップエンタテインメント誕生!

2021年3月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー
©2020映画「すくってごらん」製作委員会 ©大谷紀子/講談社
https://sukuttegoran.com/

2021.03.13(土)
文=山下シオン
撮影=佐藤 亘
スタイリング=椎名宣光
ヘアメイク=岡田 泰宜(PATIONN)