「『今すごく幸せだからこの世が終わってもいいかも』と思う瞬間を描きたかった」

――2曲目の「サービスエリア」では、恋人たちの桃源郷のような甘い世界が描かれる中で、「滅びのキスでこの世の息をとめて」という描写があります。恋愛というのは、はまりすぎるとそこに陶酔しすぎて破滅を招く危険性もあるということを歌ってるのかなと思ったんですが。

 「サービスエリア」はロマンチックなものを作りたいと思って。「今すごく幸せだからこの世が終わってもいいかも」と思うような瞬間を描きたかったんです。

 時が止まってほしいような感覚。それの究極って、破滅的なことにもつながるのかなって。

――「鬼」も恋愛中の嫉妬やもどかしさが「鬼が出てきちゃう」っていうような表現になっていて。俯瞰すると、怖さを感じるというか。

 嫉妬って、何も飾らずに投げれば人が逃げていくような感情かなと思ってるんですね。なので、なるべく可愛く描くにはどうしたらいいのかなって思いながら書いてましたね。

 ラブリーな曲は得意なので(笑)、今回のアルバムにもそういう曲を1曲は入れようかなって思ったんです。

――「リダイヤル」もストーカーになってしまった人の歌ですが、とてもメルヘンチックで可愛い歌謡曲になってます。描かれてる感情はホラーなところもありますが、音とのバランスはどう考えてるんでしょう?

 そうですね。「リダイヤル」では怖いものを可愛らしさで包んでお届けすると、より怖くなるかなと思って。少女趣味な印象にしたくてレースカバーやチェリーパイが登場します。

――『赤星青星』全体としては、ファンタジックな質感のあるポップス/歌謡曲が多く入ってる印象がありました。それは意識したんでしょうか?

 これまでのアルバムでは生楽器の編成が多かったのですが、今回は、もう少し打ち込みっぽくしたいなと思いました。

 “恋人”というテーマには、ひっそり閉じたサウンドが合うのではとは思ってました。

2021.03.12(金)
文=小松香里
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=田中大資
ヘアメイク=新井裕梨