「穂村弘さんから言葉の美しさやお茶目さを学びました」
――『赤星青星』の1曲目の「ルシファー」は歌人の穂村弘さんと詞を共作されてますね。
穂村さんとは何度か対談をさせていただく機会があったのですが、今回のアルバムを“恋人”というテーマにしようと思った時、誰かと共作した曲を1曲入れたいなと思って、真っ先に穂村弘さんが浮かんだんです。
私は中学生の頃、穂村さんの作品から「言葉ってこんなに美しいんだ」とか「お茶目って素敵」っていうことを学んだんですね。それで最初に言葉のときめきを教えてくださった穂村さんとご一緒したいなって思ったんです。
――実際、どうやって作詞を共作していったんですか?
お会いして、「こういうアルバムを作りたいと思っています」とか「最近こういうものに興味があります」というような話をして。それから1カ月以上経って、ふと「ルシファー」というタイトルで一緒に曲を作りたいって思ったんです。
そこから浮かんだフレーズをお送りしたら、穂村さんが連句のようにフレーズを付け足してくださって。そんなふうに作っていきました。
私は、穂村さんの言葉に育まれたところがあるので、穂村さんが返してくれるフレーズだったり、会話の言葉選びがすごくしっくりくるというか。私はこの人の言葉に本当に影響を受けてきたんだなって感覚がありましたね。
――「ルシファー」は幻想的な世界の恋人同士の物語という印象を受けました。どんな物語にしようと思ったんですか?
“恋人”がテーマのアルバムの冒頭なので、ときめきみたいなものを曲にしたいなと思って、最初お会いした時に最近ときめいたものの話をしたんですね。
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』に出てくる半魚人とか。ちょうどジブリ作品が映画館で再上映されていたので『千と千尋の神隠し』に出てくる龍とか。異界の生き物へのときめきがあって。その影響はあると思います。
それと、夜明けにコンビニに行った時に、東の空にひとつ星が輝いてたので、それをツイートしたら「ルシファーだ」って送ってくださった方がいて。「明けの明星か。出会いにいいな」って思ったりして。
1行目の「星たちが眠る下でポストは凍ってた」っていう歌詞は、穂村さんから送っていただいたフレーズなんです。
ここからメロディを付け足して、始まった感じがありますね。星すらも眠るような時間……明け方で目撃者がいなくて、自分とルシファーだけのふたりだけの世界っていうのが、このフレーズから伝わってくるなと思いましたし、「ポストは凍ってた」っていうフレーズからは時間が止まっている感じがあったり。
すごくロマンチックなフレーズだなと思って、ドキドキしました。
2021.03.12(金)
文=小松香里
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=田中大資
ヘアメイク=新井裕梨