潜伏生活小説 #02『サンセット・パーク』
サンセット・パークは、ブルックリンに実在する地名だという。
問題山積のマイルズ、世界への憤怒を抱えたビング、画家志望のエレン、高学歴プアのアリス。彼らとマイルズの両親も加わり、代わる代わる語り手を務める。
そこで明かされる人生の秘密、痛み、死から見えてくるもの。
不遇をかこつ世代が始めた 人生サバイバルの行方は
ポール・オースターの『サンセット・パーク』は、空き家を不法占拠した4人の若者の物語だ。
こそこそ息を潜めるように暮らすのかと思いきや、いかにも正当な所有者のように振る舞った方がバレにくいという巨漢のドラマー、ビングのアイデアに従い、廃屋を人が住めるくらいまでに手を入れて、幼なじみの女性たちと堂々とハウスシェア。
その家に、未成年との恋愛がもとで警察沙汰になりかけていたマイルズが、身を潜めに転がり込んでくる。
リーマン・ショック後の停滞社会のあおりを受けた不遇な世代の本音や悩みは、日本とアメリカで社会は違っても、共感できるところは多い。
彼らが負った心の傷は、適度な距離と気配りのある止まり木生活があったからこそ癒えた。
人生がなお不条理でも、こんなひとときがあれば「人生は温かい」と思えそう。
Column
今月の「〇〇」小説
刊行されたばかりの話題の小説を、ひとつのくくりをつけてご紹介します。
2020.05.25(月)
文=三浦天紗子