音楽好きの志村けんと一時を共に過ごし、音楽を通じて共鳴した恋人
私自身は、志村けんがR&Bに精通しているということを知ったのは、久保田利伸による発言がきっかけだった気がしている。(うろ覚えで断言できないので申し訳ないが、久保田利伸はいかりや長介についてもよく発言していた)しかし、これは偶然とも言い切れない。
2020年3月25日(水)に放送の「あいつ今何してる?」に志村けんが出演した際、結婚を考えた元恋人のエピソードが披露されていた。
その恋人の映像が流れると、アイドル歌手とは思えないほどの声量で、確かな歌唱力の持ち主であることがはっきりとわかった。
交際中の彼女は志村とよくレコード屋に行き、彼が聞いていたHi-Glossの「You'll never know」という曲にあこがれて「こういう歌を歌えるようになりたい」と練習を重ねたのだという。
その後、彼女は志村と破局。後にAMAZONSという女性コーラスグループを結成したという場面を見て驚いた。
私にとってAMAZONSとは1980年代、久保田利伸がデビューしてから数年間、必ずコーラスとしてツアーに帯同していた「あのAMAZONS」であったのだ。
日本でR&Bを根付かせた立役者として久保田利伸の存在は大きい。私も彼の存在があったからこそ、R&Bの魅力を知った一人である。
その久保田利伸の活動に欠かせない存在であり、ソウルフルな歌声でファンと魅了していたAMAZONSの一人であるYUKO(大滝裕子さん)が、音楽好きの志村けんと一時を共に過ごし、音楽を通じて共鳴をしていたと思うと、胸が熱くなった。
彼女は今でもAMAZONSとして活動し、また音楽講師としてたくさんの生徒に音楽の楽しさを教えているという。
そんな姿を見て、「いまだにちゃんと音楽やってるのはうれしいね」と語っていたときの志村けんは、とてもいい顔をしていた。
西森路代(にしもり みちよ)
1972年愛媛県生まれ。ライター。「朝日新聞」や「TV Bros.」など連載多数。テレビ賞やドラマ賞の委員も務める。
西森路代の
「あの頃、君をおっかけた」
2020.04.01(水)
文=西森路代
写真=文藝春秋
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