【第2回】本木雅弘

 現在、NHKの大河ドラマ「麒麟がくる」に斎藤道三役で出演中の本木雅弘。その凄みのある怪演ぶりで話題となっている。

 本木というと、端正な顔立ちとスマートな雰囲気がデビュー当時から変わらず、ひとつひとつ吟味して作品と向き合っているようなイメージが大きいのではないか。

 筆者自身も現在はそんなどっしりしたイメージも抱いているが、10代でシブがき隊の一員としてデビューした頃はまったく違う印象があった。

シブがき隊一の隠れたお調子者

 当時の本木……というかモックンは、シブがき隊一の隠れたお調子者だったのである。

 デビュー当時のセンターは薬丸裕英。

 今の感覚からすると、薬丸や布川敏和が三枚目を担当するのかと思われそうだが、本木は、当時テレビ東京で放送の「レッツGOアイドル」という番組で、“もと婆さん”というキャラクターを持っており、喜々としてお婆さん姿でコントを披露していたのだ。

 その破壊力はすざまじく、幼い自分は腹を抱えて笑うほどであった。

 ただ、そんな個性は全国区の番組ではそこまで見せていなかったと思う。

 「ザ・ベストテン」などの歌番組では、そこまでお調子者の顔は見せず、習字の腕前を披露したりと、どこか知的な感じを漂わせていたと思う。

 しかし、あるとき、シブがき隊の三人が、「歌のトップテン」という番組で、羽織袴を着て歌を歌うことがあり、なぜか本木だけ袴の片方に左右の足を入れていたことが発覚したこともあった。

 そのこともあって、どこかおっちょこちょいなところもあるのだな、と思ったのを覚えている。

 当時は、こうした失敗が「おいしい」という価値観がそこまでなかった時代で、少し恥ずかしそうにしていたのではなかったか。

 とにかく、なんとなく完璧そうなイメージと、それとは裏腹で、かなり率先して面白いことをしたり、ちょっと抜けているところもあるというのが、当時の印象である。

2020.02.29(土)
文=西森路代
写真=文藝春秋