何十年ものスパンで
役者を応援する愉しみも

 昨年の舞台ではかつてない緊張を味わったというお話でしたが、それは同時に、歌舞伎独特の空気を感じる場でもあったそうです。

「緊張している若い僕らをお客様がとても温かく迎えてくださったんです。その思いに支えられてどうにか務めることができました。2度目となる今度の舞台では、この1年間に他の舞台で演じた役を通して身につけてきたことをいかせるよう、取り組んでいきたいと思います」

 より高みへと向かって芸が熟成していく様子を長きにわたって応援する。それは大きな大会を経験しステップアップしていく若きアスリートを声援するのにも似た感覚。歌舞伎にはそんな愉しみもあるのです。

興味のポイントは無数

 さらに! 梅枝さんは昼の部のAプロでは『村松風二人汐汲』、夜の部では『本朝白雪姫譚話』にも出演されます。こんなふうにひとりの俳優さんが同じ月の同じ劇場で、違う演目のさまざまな役を演じる姿を目にすることができるのも、歌舞伎の特徴のひとつです。

「歌舞伎には楽しめるポイントがいくつもあります。そしてそこからさらにまた新たな興味が広がっていくことも珍しくないのです」

 感性が豊かな人ならば、きっとどこかに興味のポイントがあるはず! 今月は観に行く時間がない……という方にも朗報です。来年2月の歌舞伎座公演にも、梅枝さんの出演が決定しました。この機会に、歌舞伎デビューしてみてはいかがでしょう?

●ワンポイントアドバイス
「きものの所作」

 お正月に着物での外出を予定している人も多いのではないでしょうか。そこで梅枝さんに着崩れないためのポイントをうかがってみました。

「自分の身体のテリトリーから手足をはみ出さないようにすること、でしょうか。具体的に言うと、大股で歩いたり腕を付け根から大きく動かしたりしないことです。着崩れる原因は大抵そこにあります」

 ファスナーもボタンもなく、帯だけで身体にフィットさせているのが和服。立体的な縫製の洋服と同じように行動していたら、着崩れるのは当然ですよね。

「椅子の背もたれに深く寄りかかって座らないとか、立ち上がる時に何かにつかまって身体を大きくよじらずにスッと立つとか。ちょっとした気遣いでずいぶん違うと思います」

 つまりは万事につけてエレガントに! 何をするにも急がず慌てず、時間に余裕をもってゆったりした気持ちで振る舞うことを心がけましょう。

中村梅枝さん 歌舞伎座出演情報

十二月大歌舞伎
2019年12月2日(月)~26日(木)

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/655/

二月大歌舞伎
2020年12月2日(日)~26日(水)

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/671/

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» 第1回「歌舞伎座はじめてガイド
» 第2回「中村梅枝さんインタビュー 前篇」