情報がなかった頃の
音楽の探し方

──光石さんは80年代にはソウルのレコードもよく買われていたそうですね。

光石 買ってましたね。それこそデザイナーでスウィートソウルのマニアだった湯村輝彦さんが教祖だと思ってましたから(笑)

高橋 いわゆる「甘茶ソウル」系。

光石 そう! 湯村さんの推薦盤は、甘茶のレア盤ばっかりでした。でも、売ってないし、あっても高いし。

高橋 今はそういうレア盤がどんどん再発されてますよね。

光石 あれは完璧に俺ら狙いでしょ(笑)

高橋 僕らの世代も時代がひと回りして、今ハマってるんですよ。スウィート・ソウルとかチカーノ・ソウルとか。だから、光石さんの世代は、僕らの元祖みたいな存在なんです。

光石 当時は、黒人音楽専門の雑誌の「SOUL ON」とか、同人誌を読んだりしてました。下北沢に「EXCELLO」ってソウルバーがあって、そこにも行ってました。

 マスターがレコードをかけると、ジャケットを飾るわけですよ。それをメモしたり、お店でレコードも売ってたから安いやつを買ったりしてました。

高橋 いいっすね。

光石 当時、僕は黒縁のメガネをかけてたから、それを見た常連さんに「あ、デヴィッド・ラフィン(元テンプテーションズのヴォーカリスト)意識してる」って言われたり。

 こっちは若いから何も知らなくて「それって誰?」みたいにうろたえちゃって(笑)。でも、そのお店は本当に面白かったですね。

高橋 僕らの学生時代は、ぎりぎりで光石さん世代の感覚も多少は経験してる世代だと思うんです。よく行くバーで音楽を教えてもらってたし、CDをレンタルしたり、雑誌で情報を知るみたいなアナログ感がまだ強かったんです。

 あの頃の、まったく何も知らなかった頃に、最高の音楽がかかった瞬間の「うわー!」みたいなのをもう一回味わいたい。

光石 そうそうそう! でも、家に帰ってから聴くと興奮が冷めてて、「あれ?」って思ったり(笑)

高橋 そうですよね(笑)

» talk02へ続く(11/9公開予定)

光石 研(みついし けん)

1961年生まれ。福岡県出身。高校在学中の78年に映画『博多っ子純情』の主役に抜擢を受け、俳優デビューを果たす。主な出演作に、映画『Helpless』『紀子の食卓』『ヒミズ』『シン・ゴジラ』『アウトレイジ 最終章』『モリのいる場所』『羊と鋼の森』『教誨師』、ドラマ「バイプレイヤーズ」「未解決の女」「ハゲタカ」「フェイクニュース」などがある。テレビ東京系「木ドラ25」『デザイナー 渋井直人の休日』では主演を務めた(2019年1~4月放映)
●鈍牛倶楽部(所属事務所)公式サイト http://dongyu.co.jp/


高橋 一(たかはし まこと)

1986年生まれ。東京都出身。多摩美術大学在学中に結成した8人組ソウルバンド「思い出野郎Aチーム」のヴォーカル、トランペット担当。愛称「マコイチ」。全曲の作詞を手がける。思い出野郎Aチームは2014年12月にシングル「TIME IS OVER」でデビュー。現在までに『WEEKEND SOUL BAND』『夜のすべて』『Share the Light』と3枚のアルバム、EP『楽しく暮らそう』などをリリース。バンド主催のイベントなど精力的なライヴ活動を続ける。2019年はマンスリーイベント『ウルトラソウルピクニック』を全国各地で行っている。
●公式サイト https://oyat.jp
●カクバリズム(所属事務所)サイト https://kakubarhythm.com/artists/oyat

思い出野郎Aチーム
3rd ALBUM『Share the Light』

カクバリズム 2,700円 発売中
https://kakubarhythm.com/special/sharethelight/