森下は新たなカルチャーの発火点
ほろ酔い気分になって、さらにお店のことが気になってきたもなりさん。「ところで、なんでこういうお店をはじめようと思ったんですか?」と工場長に質問。
「印刷工場で働いていた時に、仕事終わりに作業場にコンビニで買ってきたお酒やつまみを持ち込んで、好きな音楽を流しながら、あーだこーだ話しつつ飲んでたんです。その時間がなんかすごく楽しくて(笑)。そういうノリで、みんなと飲めたら楽しいだろうなって思って」(宍戸さん)
「それに普通の印刷工場って、表から中の様子が見えないから、どういう風に作業しているのかわからないじゃないですか? 以前に雑誌でアメリカのポートランドの印刷屋が紹介されてたんですけど、外から機械が見えるようにして印刷してたりと、お店からカルチャーを発信してるんですよね。日本でも、こういうオープンな場所を作ることで、活版印刷に興味を持ってもらえたら嬉しいなって思って。だから別に飲食店でなくてもよかったんですけど、印刷屋で働く以前に飲食店での調理経験もあったし、そもそも僕は大衆酒場で飲むのが大好きだったので、酒飲みとしての経験を活かそうと(笑)」(宍戸さん)
「すごい! 今までの経験が全部詰め込まれてるわけですね(笑)。ちなみに、私みたいな女性のお客さんも飲みに来たりしますか?」(もなりさん)
「はい、女性のお客さんも結構来てくださってます。一人で飲みに来る方も多いですよ。酒場で飲むのが好きな人はもちろん、印刷や紙に興味がある女性も多くて。SNSとかで知って、印刷の機械を見に来たり、活版印刷について詳しく質問してくれたり。そうしてウチのことを知ってくれて、印刷を注文しに来てくれる方も少しずつ増えてきています」(宍戸さん)
「RHYTHM & BETTERPRESS」のオープンと前後して、この周辺にはコインランドリーと喫茶店と地域のコミュニティスペースが融合した「喫茶ランドリー」が誕生。
また橋を渡ってすぐのところには、レコードマニアが集いDJパーティも開催される、通称「レコードコンビニ」と呼ばれるコンビニエンスストアなんかも点在していて、その3軒をハシゴする人も多いのだとか。
下町・森下からはじまりつつある新しいカルチャーの息吹を体験したもなりさん、今日の感想は?
「いやぁ、びっくりしました! こちらに来る途中、近所をぶらぶら歩いてみたんですけど、昔からある中華屋さんとか町工場なんかもあちこちにあって。そんな町の中にある、印刷屋さんで立ち飲み屋さん? ってなかなか想像できなかったけど、まさかこんなオシャレなお店だとは思わなかった! 料理もお酒も美味しいし、素敵な音楽も流れてて居心地もいいし、何より活版印刷が興味深くて。森下、ヤバいですね!(笑)」
RHYTHM & BETTERPRESS
所在地 東京都墨田区千歳3-4-8 直井ビル1階
電話番号 03-6666-9190
営業時間 活版印刷 9:00~16:00、立ち飲み 17:00~21:30 L.O.
定休日 日曜、祝日
https://randbpress.com/
脇田もなり『I am ONLY!』(LP)
脇田もなりのデビューアルバムがついにLP化。2017年にリリースされ、DJ、音楽通、アイドルファンを巻き込んで話題になった一枚には、新井俊也(冗談伯爵)、ikkubaru、西寺郷太(NONA REEVES)といった面々が参加。ジャケットもLP用にリニューアルされた。
HIGH CONTRAST/VIVID SOUND 2019年4月24日発売3,300円(税抜)
脇田もなり『AHEAD!』(CD)
デビューアルバムから1年振りに届けられたセカンドアルバム。制作陣は、冗談伯爵の新井俊也と前園直樹を筆頭に、佐々木潤、マイクロスター、Illicit Tsuboiなどの豪華面子が名を連ねる。シングルとして発表された「WINGSCAPE」「TAKE IT LUCKY!!!!」も収録。
HIGH CONTRAST/VIVID SOUND 発売中
2,500円(税抜)
Column
脇田もなりの名酒場IN THE CITY
人懐っこい歌声とちょっと通好みなサウンドで注目を浴びる新進気鋭のフィメール・シンガー、脇田もなり。お酒が大好き! だけど酒場ビギナーな彼女が、東京近郊の名店を探訪しながら、立派な酒呑みレディへの階段を昇っていく模様をお届けします。
2019.04.19(金)
文=宮内 健
撮影=丸尾和穂