早逝した天才人形工芸士を偲ぶ
数々のプロジェクト

 今、故人を偲び、さまざまなプロジェクトが進んでいます。ひとつは由香子さんが遺した雛人形の着物を、正絹金襴を用いた十二単ふうのドレスに再現するプロジェクト。

 手がけるのは、由香子さんの雛人形の着物を特注で織っていた西陣織の老舗「誉勘商店」。

 はじめは由香子さんの個性的な依頼に抵抗を示していたものの、のちに最大の理解者となった京都の誉勘商店が、後藤由香子ワールドを等身大で鑑賞できるよう、急ピッチで制作にいそしんでいます。

 そしてもうひとつ、これまで由香子さんが手がけてきたすべての雛人形を撮影し、さらに雛人形のモデルとして由香子さん自身にレンズを向けてきた夫・通昭さんの写真展「Yukako Goto」が開かれます。

 初めての、夫婦でのコラボレーション展です。ここには、前述した十二単ドレスも展示されることになっています。

後藤通昭 写真展「Yukako Goto」

会場 FMエキシビジョンサロン銀座
会期 2019年2月27日(水)~3月5日(火)
所在地 東京都中央区銀座6-4-7 いらかビル1・2F
開館時間 10:00~17:00(最終日 10:00~15:00)
http://frameman.co.jp/fmginzasalon.html

「思えば由香子ちゃんが亡くなってから、まともに取材を受けたのは今日が初めてです。たぶん昨年だったならば、僕はお話ができるような精神状態ではなかったでしょう」

 夫の通昭さんは今、写真などを通じ、由香子さんが遺した望みを後世へ伝えようと努めておられます。

 49歳という若さで夭逝した後藤由香子さん。桃の節句の日にはぜひ、雛人形を愛でながら、伝統と現代のはざまで闘ったひとりの人形工芸士がいたことを思い出してくださいね。

吉村智樹(よしむら ともき)

京都を拠点に西日本を旅しながら取材するフリーライター兼放送作家。テレビ番組「LIFE ~夢のカタチ」(ABC)を構成している。関西版「VOW」3部作(宝島社)をはじめ、近著に『ジワジワ来る関西』(扶桑社)や『恐怖電視台』(竹書房)がある。
Twitter:@tomokiy

2019.02.27(水)
文=吉村智樹
撮影=後藤通昭