愛車は黄色いベレット1600GT
97年ぐらいかな、僕は建築に興味があったから、三田にあった、友達が住んでいたとあるヴィンテージマンションを見に行ったことがあるんです。もうすぐ取り壊されるというから、今のうちに見ておかなきゃいけないと思って。
その途中、伊皿子坂を歩いていたら、應蘭芳さんが歩いているのを見かけた。もう50代後半を迎えていたかと思いますが、すぐに彼女だと分かりました。おきれいでしたね。
ただ、時間もないし、勇気もないし、声をかけることはできなかったんですけど……。
クレイジーバンドが99年にリリースした『goldfish bowl』というセカンドアルバムには、應蘭芳さんをモチーフとした「OH! LANGFANG」という楽曲が収められています。
妄想だけで描いたその歌詞のヒロインは、いすゞの黄色いベレット1600GTで元町あたりを飛ばしているという設定だったんですが、何と、この曲を聴いたという應蘭芳さんから、僕の事務所にファクスが送られてきた。それを読んだ時は、心底驚きました。
何でも、應蘭芳さんは本当に黄色いベレGに乗っていたことがあるというんです。しかも、元町あたりを流していたという。自分の仮説が正しかったことが奇しくも証明されてしまった。
その後、当時クレイジーケンバンドが所属していたレーベルであるPヴァインから、歌手として吹き込んだ應蘭芳さんの音源が復刻されることになります。
実をいうと、僕は寡聞にして、このリイシューまでこれらの楽曲の存在を知ることがありませんでした。
「渚の歓喜」「痛い痛い痛いのよ」といった曲名からも分かる通り、68年から71年にかけてリリースされた彼女のシングルからは、隠そうとしても隠すことなどできないお色気があふれ出しています。
應蘭芳さんは、掘っても掘っても掘り尽くせない魅力の宝庫なんですよね。知れば知るほど、好きになってしまいます。
Column
横山剣の「俺の好きな女」
東洋一のサウンド・マシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人の域を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!
2019.02.27(水)
構成=下井草 秀(文化デリック)