◆私の愛する香港スター

デヴィッド・チャンの
アクションがすごい!

デヴィッド・チャン(David Chiang)/姜大衛

1947年6月29日江蘇省生まれ。両親、兄、異父弟も映画人という映画一家。幼い頃から子役として『江山美人』(59)などに出演。少年時代から武術を習い、武術指導やスタントマン、端役などを経て『死角』(69)でチャン・チェ監督作品でのメイン出演を果たす。『ヴェンジェンス 報仇』(70)で第16回アジア映画祭最優秀主演男優賞を受賞し、「亞州影帝」の称号を得る。70年代のショウ・ブラザース作品に次々と主演し、コンビで出演することの多いティ・ロンとともに大スターとして一世を風靡した。近年では芸名をJohn Chiang(ジョン・チャン)としている。

 今回は、特にお気に入りのデヴィッド・チャン出演の3作品をご紹介します。


#01
『ヴェンジェンス 報仇』
(原題『報仇』)
●70年製作/03年日本公開(中世の里なみおか映画祭)

 1925年、中国のとある都市が舞台。京劇俳優のユイロウ(ティ・ロン)が悪漢達に惨殺される。兄ユイロウ死亡の知らせを受け、南方から舞い戻った弟シャオロウ(デヴィッド・チャン)が暗殺の共謀者に復讐を決意します。

 単身敵地に乗り込み、延々と死闘を繰り広げる短刀アクションはすさまじく、最後は真っ白な胴着を鮮血に染めながら自身も絶命します。

#02
『新・片腕必殺剣』
(原題『新獨臂刀』)
●71年製作/日本未公開

 英雄ロン(クー・フェン)は二刀流で世に名を知らしめていたレイ・リ(デヴィッド・チャン)を妬み、武術界から追放しようと画策、罠にはまり勝負に負けたレイは自ら右腕を切り落とすことに。

 やがて食堂に雇われ、客から馬鹿にされる毎日を送っていましたが、同じく二刀流の名手フォン(ティ・ロン)と出会い親交を深めます。しかしフォンもまたロンの罠にかかり惨殺されてしまう。親友の死をきっかけにレイは再び剣を手に……。

 ティ・ロンの惨殺シーンも体が真っ二つと残酷描写が激しいですが、最後デヴィッド・チャンが片腕一刀だけで100人もの敵を斬りつけていく姿が圧巻です。ジミー・ウォング主演の『片腕必殺剣』『続・片腕必殺剣』と本作は剣劇アクションの大傑作です!

#03
『ブラッド・ブラザース 刺馬』
(原題『刺馬』)
●73年製作/03年日本公開(中世の里なみおか映画祭)

 山賊のホアン・チュン(チェン・カンタイ)、チャン・ウェンシャン(デヴィッド・チャン)はマー・シンイ(ティ・ロン)に武術の腕を見込まれ、義兄弟の契りを交わします。

 数年後、野心家のマーは山賊を手下に組織を拡大して出世、約束通り二人を雇うが、ホアンの妻ミラン(チン・リー)との不貞が明るみに出ては出世の障害になると考え、腹心の部下にホアンを暗殺させます。

 それを知ったチャンもマーの暗殺を企てますが、暗殺の首謀者として捕らえられ処刑され……。

 有名な清朝のマー総督刺殺事件を題材にした、3人の男たちの友情と裏切りのドラマ。飛び散る鮮血と暴力の残酷描写で男の生きざまを描くチャン・チェ監督作品のなかでも傑作と名高い一本です。


 『英雄十三傑』(70)では生きたまま五体を馬に引き裂かれるなど、英雄の残酷な死に様が似合うデヴィッド・チャンですが、大柄で筋肉質な俳優が多い中で、小柄な体格を生かした機敏な動きが目を引き、今観ても時代を感じさせない容姿です。

 今まではジャッキー・チェン以前のアクション映画を観る機会がなかったのですが、一度観だしたら止まらなくなり、チャン・チェ監督作品でないと物足りないと思ってしまうようになりました。この時代のデヴィッド・チャン、ティ・ロン達の輝きは必見です。

『悪客』(72)、『四騎士』(72)などでデヴィッド・チャンと共演した日本のアクションスター、倉田保昭さんの自伝『香港アクションスター交友録』によると、当時もそれはそれは格好良かったそうです!

2018.11.24(土)
文・撮影=伊藤修子
撮影=佐藤 亘